Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
加藤和彦さんです。「タクシーと指輪とレストラン」が好きです。切なく、繊細で才能あふれる作品です。
最先端研究を訪ねて
【化学系薬学】
農薬
毒性のない安全な農薬を効率良く作る!新しい試薬の製品化・販売に成功
柴田哲男先生
名古屋工業大学
工学部 生命・応用化学科 生命・物質化学分野(工学研究科 工学専攻 生命・応用化学系プログラム)
◆着想のきっかけは何ですか
私は、有機化合物にフッ素を化学的に導入し、新しい除草剤や殺虫剤などの農薬を開発する研究をしています。しかしこれまでの合成方法では、フッ素ガスなど毒性の高いガスを、試薬として用いる必要がありました。そこで取り扱いが簡単で、安全なフッ素導入試薬を開発し、新しい農薬を作ろうと思ったのがきっかけです。
◆どんなことが可能になりましたか
近年、農薬だけでなく医薬品にもフッ素系の有機化合物が注目され、開発が行われています。私はこのようなフッ素系有機化合物を簡便に合成するための、優れた新しいタイプのフッ素系の合成試薬の開発に成功しました。この試薬はすでに製品化され、販売されています。
◆その研究が進むと何が良いのでしょう
これまで使用していた、毒性の高い試薬の使用を回避できます。また、殺虫剤や農薬だけでなく、医薬品の開発研究に役立つ、便利なツールとなることが期待されます。製薬業界や農薬開発に関わる業界に、大きな恩恵をもたらすことでしょう。
地球温暖化に歯止めがきかなくなり、様々なところで問題が深刻化しています。農作物の収穫もその1つです。世界人口の食料を確保するために、農薬の開発は重要です。その反面、農薬の使用は環境破壊につながります。
私たちは、安全で環境負荷の少ない新しい農薬の開発を目指しています。克服の鍵はフッ素にあると考え、研究に取り組んでいます。
大学時代にペニシリンの存在を知ったことが、研究への興味の原点です。ペニシリンは、青カビが産生する抗生物質です。人類を脅かしていた感染症の克服を可能にした立役者がペニシリンであることを知り、ペニシリンに感動しました。
それから、カビがどうやってペニシリンを作るのか、何故カビはペニシリンを作るのかなど、興味が尽きないようになりました。大学、大学院で勉強した後、ペニシリンの発見された英国に渡り、ペニシリン研究の最先端に触れることが出来ました。この気持ちと経験は、今でも私の財産です。
フッ素化学を中心とした、新しい医薬品や農薬開発に繋がる有機化学の研究を行っています。抗マラリア薬、エイズ治療薬、抗がん剤など様々です。
◆主な業種
・化学・農薬・製薬
◆主な職種
・研究・開発
◆学んだことはどう生きる?
製薬企業、化学メーカー、農薬企業などでの研究開発に携わっています。
私は工学部で研究・教育を行っています。皆さんは、工学部でも薬の開発研究を行っているところがあることを知っていますか。薬の研究は「薬学部」や「医学部」だけだと思っていないでしょうか。
実は、私のように工学部で薬の開発研究を行っているところは、少なくありません。医薬品はヒトに、農薬は植物や害虫に使用しますが、その「薬」は、有機化合物がほとんどです。
ですから、薬を「もの」と捉えると「ものづくり」に特化した工学部は、まさに薬品開発研究にも適しているのです。「ものづくり」と「薬」の両方に興味のある生徒さんは是非、工学部も進路選択の1つに加えてください。
1. ホームセンターには、蚊や蟻、ゴキブリ退治の殺虫剤や家庭菜園で使用する除草剤、ダニや害虫対策の殺虫剤がたくさん売られています。それらの容器を手に取って、ラベルに記載されている有効成分を見てみましょう。その有効成分の化学構造式を調べて、フッ素が入っているものと入っていないものに分類してみましょう。どのようなことがわかりますか。
2. 1の調査が終了したら、次に殺虫剤と除草剤に分類し、それぞれに対してフッ素が入っているか否かで分類してみましょう。どのような傾向が見られますか。
ペニシリン開発秘話
ジョン・ シーハン:著 往田俊雄:訳(草思社)
アメリカ・マサチューセッツ工科大学のジョン・シーハン博士は、人工的に生み出すことは不可能と言われていたペニシリンの合成を、1953年に初めて成功させた。本書は、博士の研究に賭けた半生の回想録である。
第二次世界大戦中にアメリカ、イギリスの水面下で極秘に進められたこのプロジェクトが、生き生きと描き出される。医薬品の開発研究にまつわる、人間味溢れるドラマが展開されている。
不思議の薬 サリドマイドの話
鳩飼きい子(潮出版社)
睡眠薬やつわり止めとして用いられていた薬、サリドマイドを妊娠中に服用することで、四肢に障がいのある赤ちゃんが生まれるという薬害事件が、1960年頃に起きた。本書は、妊娠初期にサリドマイドを服用して薬害の被害者となってしまった著者が、当時の状況について赤裸々に語ったノンフィクションである。
二重らせん
ジェームス・D・ワトソン:著 江上不二夫、中村桂子:訳(ブルーバックス)
DNAは、生物の遺伝子情報を伝える本体である。その化学構造はらせん形で、さらに二重になっているということを突きとめたのが、イギリスのウイルキンス、クリック両博士、そしてアメリカのワトソン博士だった。3人はこの成果によって、1962年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞している。
その発見に至るまでのプロセスを、ワトソン博士によって書かれたのが本書である。強敵ポーリング教授とのデッドヒート、そしてノーベル賞受賞までの道のりを、人間味あふれる語り口で一気に読ませてくれる。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
加藤和彦さんです。「タクシーと指輪とレストラン」が好きです。切なく、繊細で才能あふれる作品です。
Q2.研究以外で楽しいことは?
三人の娘と過ごすことです。優しく強くなれます。
Q3.会ってみたい有名人は?
さくらももこさんです。作品が心の支えになるからです。