若手研究が世界を変える!

【ヒューマンインタフェース・インタラクション】

バーチャルリアリティ

電気刺激で作るもう一つの現実

人間の五感を操るVRで、SFの世界を越えよう

青山一真先生 

 

東京大学

情報理工学系研究科/バーチャルリアリティ教育研究センター

 

 先生のフィールドはこの本から

ソードアート・オンライン

川原礫(電撃文庫)

近年最も有名な、バーチャルリアリティを題材にした小説の一つです。ナーヴギアと呼ばれるVR装置を用いて完全にバーチャルな世界に入り込むことができるようになった世界で、VR装置を使った事件が起こります。そういった事件に関連してVR世界の内外で主人公が様々な活躍をしていきます。

 

VR世界に入り込むという題材は古くからあるものですが、この作品は近年書かれたものであることもあり、比較的近未来で実現できそうな範囲で、その装置の仕組みが設定されています。もしかしたら高校生の皆さんが研究者や技術者になるころには、このような技術が皆さんによって開発されるという未来があるかもしれません。

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 世界を変える研究はこれ!

人間の五感を操るVRで、SFの世界を越えよう

触覚や聴覚、味覚までバーチャルに

バーチャルリアリティ(VR)という言葉は、皆さんにも耳なじみがあるかもしれません。コンピュータで作り出した世界で様々な体験をする技術のことです。VRというと頭にかぶって使うヘッドセットのイメージが強いと思いますが、SF小説や漫画、アニメの世界ではさらに先進的なVR技術が題材になっています。

 

SFの世界では脳や神経に電気や電磁波などを使って偽の信号を送ることで,視覚だけではなく、触覚や聴覚、味覚までもバーチャルな世界に誘ってくれる装置が存在します。私はそんな先進的なVR装置を開発し、さらにSF作家でも想像できないような技術を作り出すことを目標に研究をしています。

 

皮膚から微弱電流を流し、感覚を作り出す

 

「脳や体は電気信号で動いている」と聞くと、脳波や電気刺激でダイエットする機械のイメージもあって、納得してしまうのではないでしょうか。私たちの体に張り巡らされた「神経」は電気的な活動を伴って、脳から体へ、体から脳へと情報を伝達してくれます。

 

私は皮膚上に張り付けたゲルやスポンジ製の電極を通して、微弱な電流を皮膚を経由して神経へと流す、「経皮電気刺激」を使い、視覚や味覚、嗅覚、触覚など様々な感覚を作り出したり、強く感じさせたり、遮断したりする方法を開発しています。

 

制限はあるものの、これらの技術が少しずつ現実のものになってきました。研究を通し,SFの世界を自らの手で実現していく感覚は、表現ができないほど楽しいものです。

 

東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターの設立記念式典にて、前庭電気刺激という加速度の感覚を作り出す電気刺激とVRヘッドセットを併用した新しいVR体験のデモンストレーションを行いました。これは、ヘッドホンのような耳当て(イヤマフといいます)の内側に電極が設置されていて、イヤマフを装着すれば自然と電極も頭部に装着されるようになっています。

 

 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

大学の講義でブレインコンピュータインタフェース(BCI)の話を聞いたことが、私の研究のスタートでした。脳に電極を埋め込むことで、目が見えない人が光を感じることができるようになるという内容でした。様々な情報を神経に直接流し込む技術の可能性に感動したのを覚えています。

 

BCIは身体の障害を技術で埋め合わせる(補綴といいます)という使い方もできますが、他にも利用方法があるということが書籍などを調べていてわかりました。その一つがバーチャルリアリティ(VR)です。BCIの研究の応用先としてVRという分野に出会った私は、今もVRの分野でBCIと同様に神経を刺激する技術の研究を続けています。

 

◆学生時代は

 

小学生のころから大学まで、ずっと野球をしていました。スポーツの世界も研究の世界も結構似たところがあって、自分が前に進んでいるのかどうかよくわからない状態でありながら、日々を過ごさなければなりません。

 

そういったある種、不安定な状態でも研究を続けられるのは、うまくなっているかわからないのにスポーツの練習を続けていたという経験から来る部分が大きいかもしれません。

 

◆出身高校は?

 

島根県立松江北高校

 

 先生の分野を学ぶには

「ヒューマンインタフェース・インタラクション」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

13.IT・AI」の「48.人工知能・機械学習、画像(CG等)、インターフェース系」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

安藤英由樹

大阪芸術大学 芸術学部 アートサイエンス学科

科学技術を使ったアートを制作し、逆にアートに応用される技術を使って人間を調べる研究をしています。誰も見たことのないモノを設計し、自ら創り上げる技術と姿勢に、技術者として強く影響を受けました。

芸術学部アートサイエンス学科HP


雨宮智浩

東京大学 工学部 機械情報工学科/情報理工学系研究科 附属情報理工学教育研究センター/バーチャルリアリティ教育研究センター

人の感覚や情報処理の特性から生まれる錯覚を利用して、物理的にはあり得ない現象を錯覚させる研究をしています。研究の発想が非常にユニークでありながら、その検証のための論理構成が非常に丁寧で、研究者の見本のような先生です。

雨宮先生のページ


飯塚博幸

北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科/情報科学研究科 情報理工学専攻

複雑な数理モデルや機械学習、ニューラルネット等を用いて、人や動物、自然現象等様々な現象を明らかにする研究をしています。研究の幅が非常に広く、日常の気づきに対して研究の要素を抽出するのが非常にうまい先生です。

自律系工学研究室HP

 


 青山先生の研究・研究室を見てみよう

VRセンターではVR研究をするための機材が充実しています。作った新しいシステムやコンテンツは研究室の仲間とすぐにお試しの体験会を実施して、良い点や問題点を話し合い、さらに良いVR技術となるようにブラッシュアップしていきます。

 

 中高生におススメ

トコトンやさしいVRの本

廣瀬通孝(監修)(日刊工業新聞社)

VRの概要や歴史、技術の基本的なことがよくわかる本です。VRに興味があってもう少し詳しく知りたい方におすすめです。

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X細胞は深く息をする

やまあき道頓(サンクチュアリ出版)

技術と倫理の話がストーリーの主軸です。研究、特に生命科学などに興味のある方におすすめです。

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 先生へ一問一答!

Q1.熱中したゲームは?

『あつまれ どうぶつの森』

 


Q2.大学時代の部活・サークルは?

硬式野球部

 


Q3.研究以外で楽しいことは?

アニメや漫画の舞台、モデルになった場所を訪れること。