若手研究が世界を変える!

【発生生物学】

生物の形成過程

ウニの個体差はなぜ? 環境が生育に及ぼす影響

谷口俊介先生

 

筑波大学

生命環境学群 生物学類(下田臨海実験センター)

 

 出会いの一冊

釣りキチ三平

矢口高雄(講談社漫画文庫)

自然と生き物に対する考え方や姿勢がとてもよく描かれています。自然を正しく敬い、怖がることが大切であることを教えてくれます。なんでもかんでも危ないから禁止という、昨今の考え方とは違うかもしれませんが、ヒトも自然の一部であるので正しく知って接することの必要性を説いてくれます。

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 世界を変える研究はこれ!

ウニの個体差はなぜ? 環境が生育に及ぼす影響

受精卵から体ができる仕組みをウニで

皆さんを含む多くのヒトや動物は、目が見えて、ご飯を食べることができると思います。「なぜ」だと思いますか。

 

一見当たり前に思えるこれらの能力を発揮できる体が、たった一つの細胞である受精卵から正確に作られるのは「なぜ」なのか。その謎を解くために、私はウニを使って研究をしています。

 

光、温度、食べ物の影響は

 

皆さんが食べているウニの生殖巣からは、数えられないくらい大量の精子と卵を採取できます。そのため、ウニは昔から生物学、特に発生生物学の重要な研究対象でした。

 

そこで今回はそのウニの幼生を使って、光や温度や食べ物といった外部環境の違いが、体の形づくりにどのような影響を与えるかを調べようとしています。

 

同種類のウニでも、場所ごとに何かが違う!

 

私は旅先でいろいろな場所を訪れた際、海岸でいろいろな生き物を見るのが好きです。最近は職業柄ウニを見ることが多いのですが、その時に、同じ種類であるはずのウニが場所ごと少しずつ、何かが違う!と感じることがあります。

 

平均的な大きさが微妙に違ったり、殻の高さが違ったり。かといって、移動して食べてという行動様式は変わらないし、ましてや種(しゅ)が変わることなんて当然ありません。

 

でも、絶対に何かが少し違うと感じます。その少しの違いが「なぜ」生まれるのか。個性と言える範囲なのか、遺伝的要因なのかも含めて、生育場所の物理的外部環境の違いが発生・生育に与える影響を、科学の言葉で表現できるように解析をしていきたいと思っています。

 

所属先である筑波大学下田臨海実験センターの前に広がる鍋田浜。とても美しいビーチで泳いで魚を採集して飼育することを趣味にしています。また、実際に生き物は自然の中で生活しているということを実感できる環境でもあります。大学に入って研究を始め、特にDNAやタンパク質といった分子の働きに着目するようになると、実験で用いる生物は飼育しやすいモデル生物になります。その環境が続くと、それらの生物が自然のなかでどのように振舞っているのかという感覚がおろそかになりがちです。そんな時は少し海で泳いでみれば、生き物は我々ヒトも含めて自然の中の一部であるというごく当たり前の感覚を取り戻すことができるので、生物学者の仕事場としてはとても良い環境だと思います。

 

フランスの地中海沿いで採集したヨーロッパムラサキウニParacentrotus lividus。ヨーロッパのウニ研究者はこの種をモデル生物として利用しています。出張や学会発表でいろいろな国にいくたび、海岸でウニがいないか見て回るのも楽しいです。

 

 先生の分野を学ぶには

「発生生物学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」

 


 谷口先生の研究・研究室を見てみよう

アメリカMarine Biological Laboratoryで1年半に一度開催されるウニ研究の国際学会Developmental Biology of the Sea Urchinでの発表風景。ウニを使って発生生物学・細胞生物学・進化生物学・ゲノム生物学等の研究を行なっている世界中の研究者や学生が集まり発表と議論を4泊5日の泊まり込みで行います。

 

 先生からのメッセージ

たくさんの人と出会って話す!森や山へ、海や川へ!

 

私自身は、本を読む暇があったら”たくさんの人と出会って話す!森や山へ行って歩く!海や川で泳ぐ!”ことを大切にしています。当然本を読むことは大切だとは思いますが、人には得意不得意、好き嫌いもあります。将来研究者になりたい・研究をやりたいと思っていても、本をたくさん読んでいないとダメかもと思わなくても良いということを伝えたいです。

 

もちろんたくさん本を読んで知識がたくさんある人を見るとすごいなーと思いますが、いろいろな人が世の中にはいて、いろいろなタイプの人が研究者になった方がおもしろいと思うので、字で読んだ知識と同じくらい、目で見て耳で聞いて指で触って得た知識も大切だと思えれば良いのではと考えています。

 

 先生へ一問一答!

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

スイス。中立を維持できる国民の確かさと、地理的にEUのいろいろなところに行けるため。食事もおいしいです。

 


Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

Mr. Children

 


Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『シンドラーのリスト』

 


Q4.熱中したゲームは?

『MythII』を少し(熱中?)。

 


Q5.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

スキー場での住み込みバイト