若手研究が世界を変える!

【応用物性】

発電可能なポリマー

振動が電源になる。発電シートや発電繊維で社会を変える

中嶋宇史先生

 

東京理科大学

理学部第一部 応用物理学科(理学研究科 応用物理学専攻)

 

 出会いの一冊

旅人 ある物理学者の回想

湯川秀樹(角川ソフィア文庫)

日本初のノーベル賞受賞者である湯川先生の自伝。私が高校生の頃に読んで、研究者に憧れの念を持つきっかけになりました。

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 世界を変える研究はこれ!

振動が電源になる。発電シートや発電繊維で社会を変える

振動を電気に変える「圧電体」をポリマーで

私たちは、モノの振動を触覚で感じたり、空気の振動を音として聴覚でとらえたりしています。このような振動を電気的な信号に変換する材料に、圧電体というものがあります。

 

私は、この圧電体を、私たちの構成分子と同じポリマーで作り、その特性を向上させる研究に取り組んでいます。

 

この圧電ポリマーの機構を正しく理解し、特性を向上させることができれば、生体センサーや振動などを電気として取り出す「振動発電」を薄いシートや糸の形で実現できるようになり、これまでになかった応用が期待されます。

 

社会のあちこちに埋め込むセンサー その電源として

 

皆さんはどのような未来を実現したいと考えているでしょうか。また、どのようにすれば未来を変えられるでしょうか。

 

センサーの観点から考えると、数兆個ものセンサーがインターネットにつながり、ありとあらゆるモノの状態をセンシングすることで、これまでになかった価値を生み出すことができます。例えば病気の流行を早期に発見したり、建物の損傷個所を見つけたり、交通渋滞を緩和したり、エネルギーの無駄遣いを減らすことができます。

 

しかし、そのためには無線通信技術やデータ解析技術の進展はもちろんのこと、多数のセンサーを永久に動かすことのできる電源の確保など、多くの課題も残されています。そのセンサーの電源としても活用が期待されているのが、圧電ポリマーです。

 

皆さんが世界中の人たちと連携して、一緒に世界を変える仲間の一員になってくれる未来を楽しみにしています。

 

物質の構造や運動性、エネルギー変換特性などを評価する装置がならんでいる研究室での日常風景。自分が作製した試料を持ち込んで測定を行います。共同研究先であるマレーシア・マラヤ大学と厦門大学マレーシア校の学生さんと教員で、国際共同研究を行っているところ。 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

環境発電は、振動や熱など身の回りにあるエネルギーから電力を取得するクリーンな発電技術です。センサーの電源としての活用も期待されており、この技術を発展させることができれば、エネルギーの無駄遣いもなくなります。

 


 きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

 

もともと、圧電性を有する強誘電ポリマーの運動性に関する研究で博士号を取得しました。この強誘電体が持つ機能性やポリマーの複雑性が、物性を理解したいという当時の動機に合っていたと思います。

 

依然として理解できていないことも多く、その気持ちは今でも変わりません。研究者になってから様々な人との出会いを通じて、どのような応用ができるかといった気持ちも強くなっていって、その延長線上で本研究を進めています。基礎と応用、両方やれるのは楽しいです。

 

◆中高時代は

 

正直なところ、何か頑張っていたとか強い信念があったとかはありませんでした。専門分野に関する勉強を頑張ったなと思うのは、大学での一部の科目と、修士や博士課程になって自分で勉強するようになってからです。

 

中高生の時には、広い視野を持つことも大切だと思います。外の世界は自分が思っている以上に広いことに気がつくでしょう。やりたいことが見つかれば自然と頑張れるし、同じことを目指す仲間にも出会えると思います。

 

 先生の分野を学ぶには

「応用物性」学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)

15.エレクトロニクス・ナノ」の「60.物性物理・量子物理、半導体、電子関連材料」

 


 注目の研究室や研究の大学へ行こう!

山本貴博

東京理科大学 理学部 物理学科/工学研究科 電気工学専攻

【理論物理】

理論物理学を中心として、エネルギー、水、アートなど多方面に研究を展開されています。物理って面白い!と感じさせてくれる鉄人です。

山本研究室HP 


伊藤拓海

東京理科大学 工学部 建築学科/工学研究科 建築学専攻

【建築IoT】

みらいの建物である知能住宅に関する研究を展開されています。異分野融合研究も盛んで、新しいアイデアをどんどん形にしています。

伊藤研究室HP


元祐昌廣

東京理科大学 工学部 機械工学科/工学研究科 機械工学専攻

【熱流体】

熱流体現象のプロフェッショナルでナノテクと高精度計測技術を駆使して、新しいセンサーを創られています。考え方や立ち振る舞いもみらい人な研究者です。

元祐研究室HP 

 


 中嶋先生の研究・研究室を見てみよう

学内でのゼミの一コマ。国内の研究所からも研究者を招待して、相互に研究のプレゼンを行うとともに英語で質疑応答を行っている。

 

 先生の学部・学科で学ぼう

東京理科大学理学部応用物理学科では、物理学を単なる机上の学問として終わらせるのではなく、社会変革につながる応用も視野に入れた研究と教育を展開しています。物理の基礎をしっかり学びたい、そしてその物理を武器にして、幅広いジャンルで新しい価値を生み出していきたいと考えている学生におすすめします。学内外の共同研究も盛んです。

 

 中高生におススメ

喜嶋先生の静かな世界

森博嗣(講談社文庫)

研究者の純粋さと学問を追求することの楽しさに気づかせてくれる本です。

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ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで

Stephen W. Hawking(ハヤカワ文庫NF)

宇宙とは何かに興味を持つことは、自然科学への興味の原点だと思います。

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Newton

(ニュートンプレス)

最近の論文の紹介や特集も充実していて、新しい情報に触れられると思います。面白いなと思った記事は、原著論文を読んで勉強することもできるので、研究にも役立ちます。研究者仲間との会話の中でも、いまだにNewtonの記事で盛り上がります。

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 先生へ一問一答!

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

物理学と電気電子工学

 


Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

 マレーシア。共同研究をしていて、とても過ごしやすく、人もアクティブで楽しいです。

 


Q3.印象に残っている映画は?

 『天気の子』

 


Q4.研究以外で楽しいことは?

研究のかたわら、釣りキチ三平のような生活をしてみたいと思っています。