【有機化学】
不可視光
見えない光に脚光を!不可視光を極め、材料分野での実用へ
古山渓行先生
金沢大学
理工学域 物質科学類 応用化学コース(自然科学研究科 物質化学専攻)
パラサイト・イヴ
瀬名秀明(新潮文庫)
著者は作品発表当時、大学院博士課程に在籍していました。もちろん、ホラー小説なので内容は完全なフィクションですが、研究室の生活に関する描写は「本物」です。
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見えない光に脚光を!不可視光を極め、材料分野での実用へ
「見える」光は古くから研究されてきた
なぜ、人間は様々な色を見分けることができるのでしょうか。太陽から降り注ぐ光や、電気などから人工的に作られる光は、ある一定の波の繰り返しからできていると言われています。
繰り返し単位の長さを波長と呼び、波長の違いにより光は様々な性質を見せます。皆さんが色を見分けることができるのは、特定の波長(可視領域と呼びます)を見分ける機能が身体の中に備わっているからです。
太陽光は最も大きな自然エネルギー源であり、その半数はこの目に見える光です。だから、人間はその光を知覚できるようになったのでしょう。そこで、目に見える光は古来より様々な分野の、多数の研究者の興味の対象になってきました。
オンリーワンの「見えない光」研究を
では、残り半分の「見えない光」研究対象として必要ない、面白くないのでしょうか。私が研究対象にしているのは、目に見えるより少しだけ繰り返し単位が長い、近赤外領域に位置する光、近赤外光です。目に見えないからか、この部分が面白いと思っている研究者は少ないように感じます。
しかし、研究の対象は自分だけの一番を作れることだと私は思います。オリンピックの競技を増やすことは難しいですが、研究者は自由に競技を作って自分が世界一になれる、これが魅力だと思います。
センサや医療材料に応用
実際、私が開発した近赤外光を利用できる材料はセンサや医療材料などにおける有用性が分かっています。さらに、新しいものづくりのプロセスにも活用できるのではないかと研究を進めています。近赤外領域のイメージを「見えなくてもとっても目立つ」ものにすることが私の夢です。
高校生が研究室を訪問することもありました。
身近なエネルギー源である太陽光ですが、現代社会では必ずしも有効活用できているとは言えません。太陽エネルギーの約半分を占め、ヒトの目に見える可視光の活用については比較的研究・開発が進んでいますが、残り半分については、ほぼ未利用です。
私は未利用エネルギーの中でも、「近赤外光」と呼ばれるヒトの目に見えない光を活用する仕組みの開発に挑んでいます。この目標達成により、単に未利用エネルギーが活用できるだけでなく、可視光を使ったエネルギー活用の発展にも貢献できます。
◆テーマとこう出会った
学生時代は、新しい有機物質の作り方を提案する研究をしていました。通常この研究では熱エネルギーを使いますが、当時漠然と光エネルギーも使えたら面白そうだなと思っていました。
しかし特にアイデアはないまま卒業して大学の研究者になり、光を使って物質の機能を調べる研究に携わることになりました。ここでは一転、有機物質を既存の方法で作った上で物理的な性質を調べることが研究の中心であり、学生時代の研究の方向性とは異なるスタイルを経験しました。
その後自分の裁量で研究テーマを決める立場となり、ある日、「全然違う2つの研究を組み合わせれば昔やりたかったことができるのでは?」と気づいて、現在の研究を進めています。何でもつながるものですね。
◆大学院時代は
電車通学の車内でよく小説を読んでいました。内容は科学とは全く関係ありません。しかし研究は、アイデアを提案すること、成果を外部に伝えることも大事で、大量の文章を書くことも多い仕事です。どうやって自分の研究を演出するかを考える際には、この時の読書経験が多少役に立っているのかもしれません。
◆出身高校は?
栃木県立宇都宮高校
Tebello Nyokong
Rhodes大学 化学科
【有機色素を利用したナノ材料の開発】
化学分野の研究がそれほど強くないとされる南アフリカで、長年に渡り世界第一線でご活躍されている黒人の女性教授(敢えてこう書かせていただきます)です。ご縁があってお話しさせていただく機会がありましたが、真の多様性とは何か、ということをとても勉強させていただきました。
カナダで開催された国際学会に参加した時に、
一つの分野を極めることは重要ですが、それだけでは現代の研究は成立しません。私たちの学科では、有機化学のような基礎的な分野から、超分子化学などの物性分野、社会実装を目指した有機薄膜太陽電池の開発などの応用分野まで、化学の幅広い内容に強みを持っています。
また、国を代表する研究機関であるナノ生命科学研究所などが学内にあり、これらと連携した計測科学・生命科学などの教育・研究へのサポートもあります。
采配
落合博満(ダイヤモンド社)
プロ野球の世界で結果を出し続けてきた著者がどういうことを考えてきたのか、という本です。仕事で結果を出すのに必要なのは天賦の才能ではなく、考え抜いて努力することだと実感できると思います。
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Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
物理(物性物理学)または情報科学。前者は、当時物理学というと「理論めいたもの」というイメージしかなかったのですが、物性系にはものつくりに近い分野もあるというのもあり、化学とは異なるアプローチから学んでみたいです。後者に関して、化学はどうしても研究に専門の設備が必要になるので、究極的にパソコン一つで研究ができるという分野には憧れます。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
あえて暮らさなくても経験できることは多いと思うので、特にありません。もちろん、研究活動の拠点が海外になれば、そこに住むと思います。呼ばれればどこへでも、という姿勢です。
Q3.熱中したゲームは?
学生時代は、RPGを普通にプレイするだけでなく、制限をかけた条件でクリアするのが面白いと思っていました。ゲームのシステムをしっかり理解して、制限下での新しいクリア方法を提案することは、まさに最先端の研究者がやっていることと同じだと思います。
Q4.研究以外で楽しいことは?
国内外の旅行はずっと好きで、いろいろなところに行っています。自然も好きですが、そこに住んでいる人の日常が見える街を歩いて、自分の街との些細な違いを見つけ出すのが一番の楽しみかもしれません。