現在と同じく化学。特に実験研究ではあまり頭を使わなくてよい(?)時もありますし、思いがけず大きな発見をすることもできます。
【グリーン・環境化学】
化学反応制御
危険な試薬を使わず、電気分解で環境にやさしく物質合成
稲木信介先生
東京工業大学
物質理工学院 応用化学系
ジョジョの奇妙な冒険
荒木飛呂彦 (ジャンプ・コミックス)
言わずと知れた冒険ファンタジー漫画です。登場人物の持つ特異な能力はどれも斬新で、わくわくします。誰も思いつかないような発想は研究者にとって必要ですので、刺激を受けています。荒木先生のイラストが有名科学雑誌の表紙を飾ったこともあります。
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危険な試薬を使わず、電気分解で環境にやさしく物質合成
物質合成はどうあるべきか
私たちの身の回りは便利な化成品で溢れており、いまや作れない物質はないと言えるくらいの目覚ましい技術発展があります。しかしながら、持続可能な社会の実現に向けて、物質合成技術はどうあるべきでしょうか。
私の研究は、電解合成という手法に基づき、環境にやさしい物質合成法の開発を目標としています。「電解」とはいわゆる電気分解のことですが、電気分解により合成する(欲しいものを得る)という発想です。
水の電気分解は誰もが知る反応ですが、これは「酸素と水素を電解合成している」と換言できます。反応容器に電極を挿入し、電気(コンセントから来る電子)を薬品の代わりに用いて化学反応を行います。これにより、危険・有害な試薬を用いず、さらに安全かつ温和な条件で化学反応を行うことができます。
化学反応の効率を向上する新手法
反応の効率を向上させるためには電極の面積を大きくすることが有効なのですが、研究を進めるうちに、反応容器の中で「ワイヤレス電極」を複数個駆動させることが有効であることがわかってきました。また、このワイヤレス電極を駆動させる反応条件は従来の電解法よりも用いる電解質がごく少量で済むなど、より一層環境にやさしい物質合成法であると言えます。
実は50年前の技術に、いま脚光
この「ワイヤレス電極」の考え方は50年以上前から知られているものですが、一部の限られた分野で使用されていました。ところが最近になり異分野の研究者が着目した結果、少しの工夫で次々と新しい発見が見つかっており、ルネッサンス期とも呼べる時期を迎えています。
私の研究分野でも世界中の研究者との競争が激しくなってきているので大変ですが、それが研究の醍醐味でもあり、日本発の成果を世界に発信できるように研究を楽しんでいます。
学会発表での一コマ
20世紀型の産業を脱却し、21世紀型の環境にやさしいモノづくりへのシフトに微力ながら貢献したいです。
二酸化炭素排出を減らす化学プロセス構築に貢献したいです。
◆先生が心がけていることは?
日本化学会新領域研究グループ「サステイナブル・機能レドックス化学」の代表をしています。分野の垣根を超えた若手研究者と一緒に未来のモノづくりについて議論しています。
◆テーマとこう出会った
東京工業大学に助教として着任し、ひとつの研究テーマが軌道に乗ってきたころ、新しい研究テーマを模索していました。電解反応の装置を工夫していて、教授と相談していたところ、ふとワイヤレス電極に関するヒントをいただき、それをきっかけに勉強と実験を繰り返し、大きく視界が広がりました。今では自身の研究を代表するテーマとなっています。
◆学生時代は
小中高大時代は創造的な思考がなく、答えのない課題に取り組む研究者のような職業には向いていないと思っていました。大学院の恩師の「化学を楽しもう」というモットーに導かれ、ちょっとした成功体験を与えてもらったことがきっかけで、研究者の道を歩んでいます。選んだ進路を信じて楽しむようにしましょう。ふとしたことから自信がわいてきたり、将来を決めるきっかけに出会えるはずです。
◆出身高校は?
静岡県立沼津東高校
研究室のメンバー
東京工業大学物質理工学院では、広く化学・材料に関するカリキュラムが組まれています。進学するに際し、材料系と応用化学系に分かれ専門性を深めていきますが、世界トップレベルの研究者(教員)の下で勉強・研究活動を行うことができます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
現在と同じく化学。特に実験研究ではあまり頭を使わなくてよい(?)時もありますし、思いがけず大きな発見をすることもできます。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
いろいろな国に行きましたが、暮らすなら日本が良いです。
Q3.熱中したゲームは?
『桃太郎電鉄』のような、みんなで延々と盛り上がれるゲームが好きでした。
Q4.大学時代の部活・サークルは?
ソフトボールサークル。大学の研究室対抗のソフトボール大会などもあり、役立っています。
Q5.研究以外で楽しいことは?
卒業生にプレゼントしてもらったぶら下がり健康器。