【臨床心理学】

トップアスリート

こころに闇を抱えるトップアスリートの自立を支える

小川千里先生

 

琉球大学

グローバル教育支援機構

 

 出会いの一冊

ロケットマン(映画)

デクスター・フレッチャー(監督)

トップアスリートの多くは、幼いころから競技生活に集中しているため、スポーツがなければ、自分のこころや家族との関係を保つのが難しいことがあります。また、競技の多くは親たちから与えられ、自分で選んだのではないという場合もあります。

 

この映画は、ミュージシャンであるエルトン・ジョンの自伝です。きらびやかな一方、無条件に得られるはずの家族の愛に飢え、その苦しみを癒すために薬物やアルコールに依存する、孤独な様子が描かれています。

 

スポーツを介した依存関係にあるアスリートが、自分らしく生きるにはどうしたらいいか、この映画を通じて想像してみてください。私の研究は、このようなことをアスリートとともに考えることです。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

こころに闇を抱えるトップアスリートの自立を支える

トップアスリートとの出会い 悩みを聞く

 

私はもともと経営学の大学教員でした。そのころ、周囲にはオリンピックなどの国際大会で活躍するトップアスリートがたくさんいました。ある時、何を間違えたか、日々の生活を打ち明けるアスリートが現れ、私は彼らのこころの闇に接していくようになります。これがこの研究の原点です。

 

意外な素顔、こころの幼さ

 

筋骨隆々とした姿とは裏腹に、彼らは競技や身体の不調、人間関係のトラブルにもがいていました。そのうち、話は家族らについての悩みに発展し、幼い頃から競技での勝利が最優先で、友達との遊びや学校行事が二の次になることで、彼らのこころが人の温かみの中で十分に育たずに生きてきたことを知ります。

 

言い換えると、スポーツを介したいびつな家族関係を基盤にしたトップアスリートの「こころの幼さ」に、私は触れたのです。外見とは正反対ともいえる様子に、とても驚きました。もっとも衝撃的だったのは、彼らが周囲にそれを相談したり、気づかれたりしないまま引退し、社会に進まなければならないことでした。

 

学校や指導者、行政への提言がミッション

 

このような彼らの闇の世界について、社会にどのように伝え、関わっていけばいいか迷走していたとき、私は現在の専門である臨床心理学に出会います。この研究を通じて、アスリートの自立を助けるような教育の仕組みや競技の環境になるように、学校や指導者、行政に提言していくことが、現在の私のミッションです。この研究の道を作ってくれたトップアスリートの皆様に感謝する毎日です。

 

2019年、ロシア・モスクワで開催されたECP(欧州心理学会学術大会) にて
2019年、ロシア・モスクワで開催されたECP(欧州心理学会学術大会) にて
 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「大学生アスリートの依存性からみた自立と社会的適応」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

煙山千尋

岐阜聖徳学園大学 教育学部 学校教育課程 体育専修

【スポーツ心理学、健康心理学】スポーツ選手のストレスを予防し、競技力を発揮するための研究を行っています。私の研究が誇る共同研究者です。どんな苦境でも焦らず落ち着いて行動し、判断される素晴らしい先生です。また、統計が苦手な私に、わかりやすく説明してくれます。

煙山先生のページ


中岡孝剛

近畿大学 経営学部 経営学科/商学研究科 商学専攻

【金融論、応用計量経済学】実務経験を活かしながら、金融データについて統計的に調べています。私が大学で教え始めた頃にトップアスリートとして大学競技で活躍し、猛勉強して経済学の教員になった先生です。現在は、競技経験のない私に、大学生アスリート経験者の観点から、鋭く説得力のある感想を教えてくれます。

中岡先生のページ


松本俊彦

国立精神・神経医療研究センター/精神保健研究所 薬物依存研究部

依存症や自殺に関わる研究・治療を行っています。薬物などの依存症で困っている方々の心の痛みについて、海外の研究の翻訳、先生自身の研究や実践を読み、困っている方々の気持ちに配慮されている先生のスタンスに触れ、ほっとしました。アスリートに接していて同様でありたいと思う、モデルの先生です。

松本先生のページ

 


 どこで学べる?

「臨床心理学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

21.教育・心理」の「88.臨床心理学」

 


 先生の講義では

「他の人のことを評価するよりも、理解力を持って聴くこと」(カール・ロジャーズ)について話します。そして、事実よりも、経験を通じて感じたこと、気づいたことを話し、こころを開いてお互いが近づきやすくなることを、体験的に学びます。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
卒業生とファン感謝デーに訪れたときの一枚
卒業生とファン感謝デーに訪れたときの一枚
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業職種

 

(1)運輸業

(2)スポーツ関連業(教員・インストラクターなど)

(3)金融

 

◆学んだことはどう生きる?

 

ゼミでの内容を学生さんがどう生かしているかより、私がゼミを通じてとても大切なことを教えていただいた方について記述したいと思います。放送業界で番組ADをしている卒業生がいます。毎日放送の『ロケみつ』という番組等に関わっていたと思います。ひとつのことを幼いころから突きつめて身につけ、オリジナリティのあることを社会で発言するのは、並大抵ではないことを私に教えてくれました。人生をかけて、勇気を出して社会に発信するその様子は、当ゼミの中でも、同窓生と私が学ぶことの多い卒業生です。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

お地蔵さまと心の癒し 大槌町復興地蔵物語

野口法蔵(七つ森書館)

人・ものが存在し、育つには、周囲の人の気持ちが健全で気高いことが大切です。それを大槌町のお地蔵さんたちのお顔を通じて理解できる本です。言葉以前に、気持ちが大事であることを痛感させられます。万人向けです。



18歳からの人生デザイン

國分康孝(図書文化社)

キャリアは「生き方や暮らし方を選ぶこと」です。言葉ではわかっていても、みんなが感じる「今も先もわからない」とき、自分らしく幸せに生きていく極意を、國分先生が勇ましく、潔く論じてくれます。弱気な時に國分先生が天国からテレワークしてくれる本。中学生~大学生、その家族向けです。



旅立ちの島唄 十五の春(映画)

吉田康弘(監督)

「南大東島には高校がない。15歳で高校に行くならば、親元を離れて島を出る」。一家離散、浮気しているかもしれない母、10代での自立と孤独……特殊なようで、実はどこの家族にもありうる「他人に言えない、家のこと」が、赤裸々に描かれています。中学生~大学生、その家族向けです。三吉彩花、小林薫、大竹しのぶ出演。

 


 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

スペイン。文化や風土が好き。過去世療法では、昔スペインの船乗りだったらしい。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

AKIRA(杉山明)。『賢者の石』がお気に入りです。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『アナと雪の女王』、『キャプテンアメリカ』、『おおかみこどもの雨と雪』

 

Q4.会ってみたい有名人は?

Yoshiki、クリスティアーノ・ロナウド

 

スターウォーズのチューバッカとの対面!
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