【ヨーロッパ史・アメリカ史】

百年戦争

英仏間の百年戦争終結の定説に挑む

佐藤猛先生

 

秋田大学

教育文化学部 地域文化学科 国際文化コース

 

 出会いの一冊

百年戦争 中世ヨーロッパ最後の戦い

佐藤猛(中公新書)

ジャンヌ・ダルクが登場した戦争について、英仏間で断続的に続いた戦闘および和平交渉を叙述しています。英仏二人の王が主従関係を交わしていた状態から、いかにして二つの自立した国家が生まれたのか、王の勅令、条約文書、年代記など種類の違う史料にどう向かい合うのか、また現代世界を念頭に中世ヨーロッパをどう理解すれば良いかに注目してください。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

英仏間の百年戦争終結の定説に挑む

1453年、英軍の撤退で終わったとの定説

「百年戦争」という出来事を知っていますか。ジャンヌ・ダルクが登場する戦争です。高校世界史の教科書にも必ず記載され、1337年~1453年に英仏間で行われました。直後にイギリスで起きた「バラ戦争」とよく間違われますが、百年戦争では仏王家の紋章である「ユリの花」が争われました。

 

歴史研究は長い間、なぜこんなに長い戦争が始まったのかという起源の問題を議論してきました。しかし、戦争がどのように終わったのかについては、未解明なままです。

 

高校世界史では1453年、英軍が北仏の港町・カレーを除いて撤退したためと学びます。この考え方は欧米でも定説です。しかし、この学説は1453年以来、英仏間では海外植民地を除いて領土の変更が起こらなかったことから生まれた後知恵にすぎません。

 

英はバラ戦争、仏王はハプスブルク家と覇権争いへ

 

当時の人々は、戦争が終わったとは考えていませんでした。英側はフランスに進攻し続けましたが、自国で王位継承争であるバラ戦争が起こり、余力がなくなります。

 

仏王は、まだカレーに英領が残っているにもかかわらず、勝利宣言を発し、今度はハプスブルク家と大陸での覇権を争います。仏王の臣下たちは諸外国との戦争よりも、自分の領地が王につぶされまいと奔走し始めました。

 

百年戦争が終結していなければ、イギリスもフランスもスペインも新大陸に進出することはできませんでした。百年戦争終結の問題は、西ヨーロッパ世界がどのように近代を迎えたかという、大きな問題を解く鍵でもあるのです。

 

ジャンヌ・ダルク騎馬像:フランス中部オルレアン市(現地撮影)

彼女の活躍はフランスに勝利をもたらしたといわれる

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「フランス・アンジュー地方から見た百年戦争終結についての研究」

詳しくはこちら

 

 どこで学べる?

「ヨーロッパ史・アメリカ史」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

20.文化・文学・歴史・哲学」の「83.史学、考古学」

 


 先生の講義では

◆講義「西洋史概論」では

 

現在、欧州統合(EU)が進みながらも、本当に重要なこと(最近では移民問題や新型コロナウィルス)への対処は、EUではなく、個々の国家に委ねられています。中世ヨーロッパで誕生した国家という枠組の生命力は強く、その起源を解明する必要がある、ということを話しています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう

留学先のフランス中西部アンジェ市に残る城(現地撮影)

主要部分は13世紀後半に完成。アンジェをはじめ数々の古城が残るロワール川流域一帯は世界遺産に登録されている

 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(3) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

 

◆主な職種

 

(1) 中学校・高校教員など

(2) 総務

(3) 一般・営業事務

 

 先生の学部・学科は?

教育文化学部地域文化学科における「地域」とは、地元の地域社会とともに諸外国を含む、広い範囲を指します。そうした「地域」への貢献をキーワードとして、国際文化コースでは文学・歴史・思想という人文諸学問を通じて、「地域」の文化や魅力を世界に向けて発信する知識・思考力・技術を身につけることを目指します。その実現のため、様々な外国語修得プログラムが用意されています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

国家

プラトン、訳:藤沢令夫(岩波文庫)

高校倫理で学ぶプラトンが理想とした「哲人政治」を論じた書物。わかりやすい翻訳で、西洋文化の源流の一つ、ギリシア哲学の対話や思考のあり方を身近に感じることができます。哲学や倫理、政治に関心がある人にお勧めです。



薔薇の名前(映画)

ジャン=ジャック・アノー(監督)

14世紀初頭の北イタリアの修道院が舞台。ミステリー映画ですが、謎解きと結末は中世ヨーロッパ文化の深いところと関係しています。高校世界史でキリスト教に関心を持った人とともに、映画好きにもお勧めです。



1789年 フランス革命序論

ジョルジュ・ルフェーヴル、訳:高橋幸八郎、柴田三千雄、遅塚忠躬(岩波文庫)

フランス革命を、特権階級・ブルジョワジー・都市民衆・農民という四つの革命の複合体として考察した古典。革命とは何かだけでなく、革命史家による現代社会へのメッセージが表明される。歴史学の力強さを感じ取れます。

 


 先生に一問一答

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学。人間の現在と未来に直接関わるため。その意味では、歴史学と対極か。

 

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ボリビアやネパールなどの高地。いわゆる「先進国」でない方が、感じ、学ぶことが多いかもしれない。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『レ・ミゼラブル』。国家が個人の人生をどう翻弄したかが描かれている。

 

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

畑の肥料撒き

 

Q5.研究以外で楽しいことは?

カラオケ(特に一人カラオケ)