【教科教育学】

古典

古典を自分や社会のために生かす

武久康高先生

 

高知大学

教育学部 学校教育教員養成課程 国語教育コース(総合人間自然科学研究科 教育学専攻)

 

 出会いの一冊

寝ながら学べる構造主義

内田樹(文春新書)

本書は構造主義の「入門書」として書かれています。著書である内田樹によると、「入門書」とは「『答えることのできない問い』、『一般解のない問い』を示し、それを読者一人一人が、自分自身の問題として、みずからの身に引き受け、ゆっくりと噛みしめることができるように差し出す」ものであり、本書はそうした意味での「入門書」である、とのことです。

 

まさに本書は、我々にとって自明なものの見方となっている構造主義についての解説を通じて、いくつもの根源的な問いを示しています。ぜひ多くの高校生に、その問いを自分自身の問題として引き受け、考えてほしいと思います。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

古典を自分や社会のために生かす

「古典が読める」とは何か

古典の授業でまず思い浮かぶのは、古典文法や単語の暗記、古文の現代語訳といったところでしょうか。もちろん授業では、その主題について議論することもあるでしょうが、基本的にテストでは問われません。大学入試で問われるのも、初見の古典を短時間で正確に読み取る能力です。

 

しかし、そもそも「古典が読める」とは何がわかるようになることでしょうか。現代語訳でしょうか。主題でしょうか。実はこうした研究は、今まであまり行われてきませんでした。

 

『更級日記』を自分の生き方と関連させて議論

 

そこで私は、「古典が読める」とはどのような古典理解を指すのか整理し、そこに古典を生かす力を位置づけました。古典を生かす力とは、(1)自分や社会をより深く理解するために、あるいは(2)何か社会的な目的のために、古典を活用できる力を言います。

 

 

例えば(1)は、当時の「常識」である仏教的価値観、および現代の「常識」である能力主義の考え方を用いて『宇治拾遺物語』「絵仏師良秀」を解釈し、比較する。そのことで現代社会の特徴や問題点を考える授業。あるいは『更級日記』が最後に描く「住み慣れた家に一人残される自分の姿」。それを「キャリアを断念し、夫と子の成功を第一としてきた女性のむなしさ」を象徴する表現として捉え、そうしたテクスト世界と私たちの生き方とを関連させて議論する授業等が考えられます。また(2)は、面白いゲームを作りたいなど、各自の目的に応じて古典を利用していく授業等が考えられるでしょう。

 

大学入試からもわかるように、こうした力は既存のテストでは評価しにくく、それゆえ広く実践されてきませんでした。そのため私は、古典はもっと面白く、自身を豊かにするものだと高校生に実感してもらえるよう、古典を生かす授業について、その評価のあり方も含めて研究しています。

 

ゼミを行う国語資料室にて、ゼミの学生とともに
ゼミを行う国語資料室にて、ゼミの学生とともに
 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「社会や自分との関わりで古典を生かすための古文読解モデルと授業方法、評価指標の開発」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

間瀬茂夫

広島大学 教育学部 第三類(言語文化教育系)/人間社会科学研究科 教科教育学専攻 国語文化教育学専修

【国語科授業における国語学力評価】今回執筆した研究内容は、間瀬先生の科研に誘ってもらい、そこで学んだことをもとにしています。

間瀬先生のページ


土山和久

大阪教育大学 教育学部 学校教育教員養成課程 国語教育コース/教育学研究科 国語教育専攻

【比較国語教育学】「何か社会的な目的のために古典を生かす力」というアイデアは、土山先生からのアドバイスによるものです。

土山先生のページ

 


 どこで学べる?

「教科教育学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

21.教育・心理」の「85.教科教育、教育指導法、特別支援教育」

 


 先生の講義では

◆講義「日本文学概説」の最初に

 

村上春樹の次の言葉を取り上げます。小説家の日常的な仕事について、村上春樹は「『自分とは何か?』という問いかけを、別の総合的なかたちに(つまり物語のかたちに)置き換えていくこと」と答えています。そしてそこから学生たちには、「私たち読者の仕事とは、物語のかたちに置き換えられた『問いかけ』を探り、それを自分の問題として引き受け、考えることである」という話をしています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
ゼミ中に学生がサプライズで誕生会を開いてくれた日の様子
ゼミ中に学生がサプライズで誕生会を開いてくれた日の様子
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な職種

 

(1) 中学校・高校教員など

(2) 小学校教員

 

◆学んだことはどう生きる?

 

卒業生のほとんどは教員になっています。私のゼミでは、文学作品(古典に限りません)を分析するための観点を最初に学びますが、そこでの経験が、実際に教員になって文学教材を分析する際に役立っていると話してくれる卒業生もいます。

 

 先生の学部・学科は?

高知大学教育学部は、小学校1種免許と中学校2種免許の取得が必須となっています。そのため、教育学部附属の小学校と中学校の両校で教育実習を行います。私のゼミで勉強する学生は、中学校や高等学校の教員になる者が多いのですが、彼らの強みは小学生・中学生といった各発達段階における子どもの様子を理解しつつ、中・高等学校の現場に立つ点です。

 

天気の良い日、ゼミ中に大学のグラウンドまで散歩したときの一枚
天気の良い日、ゼミ中に大学のグラウンドまで散歩したときの一枚
 先生に一問一答

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学部に入って小児科医になりたいです。

 

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

台湾。以前住んでいて、今でも友人がたくさん住んでいるからです。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『ボヘミアン・ラプソディ』。映画を観た後、1ヵ月ぐらいは、クイーンのCDを聞きまくっていました。

 

Q4.研究以外で楽しいことは?

息子と釣りに行くこと。残念ながら娘はあまり来てくれません。

 

Q5.会ってみたい有名人は?

北川景子。実際に見て、その美しさに圧倒されてみたいです。