Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
法律。障害者はなぜ無罪になりうるのか、運転技能の証明書である免許証がなぜ身分証明書になるのかなど、新聞を読んでいて疑問に思うことが多いので、追究してみたいです。
【教育学】
フランス大学入試
思考力・表現力を伸ばすカギは?フランス・バカロレア試験成績優良校を調査
細尾萌子先生
立命館大学
文学部 人間研究学域(教育人間学専攻)
バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン
坂本尚志(星海社新書)
フランスの大学入学資格試験であるバカロレア試験では、文系・理系問わず、哲学の試験を必ず受けます。
「芸術作品とは必ず美しいものだろうか」など、一見答えのなさそうな論述試験が出されるのですが、独創性を問う試験ではなく、高校で学んだ論述の型を適用すれば解答できるということを、実際の試験問題をもとに具体的に書いた本です。
大学入試を論述試験にするだけではなく、論述の型を作ってそれを学校で教育していくことが、思考力・表現力をどの生徒にも育むためにも重要だと考えさせられます。
思考力・表現力を伸ばすカギは?フランス・バカロレア試験成績優良校を調査
フランスの入試は論述試験が中心
フランスでは高校3年生の終了時に、バカロレア試験という大学入学資格試験が、全国一斉に実施されます。
そこでは、日本の大学入試センター試験のような選択式問題はほとんどなく、論述試験が中心です。高校で学んだ知識を関連付けて構造化する思考力と、それを各教科で期待されている「型」に沿って示す表現力が測られます。
バカロレア試験の結果は、高校によって大きく違います。バカロレア試験で問われる思考力・表現力をより良く育成しているのはどんな高校かということに、興味を持ちました。
成績が良い学校と悪い学校、何が違うのか
そこで、学校の条件がほぼ同じである、バカロレア試験の結果が良い高校と結果が良くない高校を比較しました。歴史・地理と英語と数学について、授業観察と教員へのインタビューを行いました。
その結果、意外なことに、授業での指導法にはあまり違いがありませんでした。両校とも、論述課題の日常的な添削や、論述の型を発見的に獲得させる工夫(問いかけて考えさせて自分の文章でまとめさせる、生徒同士で評価させて論述の型に気づかせる、グループ学習で論述の型の理解を深めさせるなど)をしていました。
教員を信頼し、自律的に学習できることが大事
違いは、教員間の協働と、授業外での個別的な学習支援にありました。
バカロレア試験勉強のためには、学習を自分で調整する力と学習意欲が必要となります。わかっていない点を振り返り、次の目標を見つけなければいけません。さらに、こうした学習を継続する意欲も求められます。
教員間で協働して、全担当教員が各生徒の苦手をふまえて指導することは、教員への信頼につながり、意欲的な学びを励まします。また、個別的な学習支援によって、自分で計画を立てて学習を自律的に進める力が身につきます。
日本の学習指導体制を見直すきっかけにも
日本の高校では近年、思考力・判断力・表現力を育むためにアクティブ・ラーニングが注目されていますが、授業の指導法を工夫するだけではなく、教員間の協働や授業外での個別的な学習支援の役割を再検討することも、必要なのかもしれません。
次の課題として、フランスの高校では教員間の協働をどのように行っているのか、メリットやデメリットは何なのかを知りたいと思い、パリ郊外にあるボアロム高校で調査を始めたところです。
フランスのボアロム高校でグラセ校長、ブトル教頭、ガエット教頭と
パリの高校調査をした後にセーヌ川でお散歩
知識を活用する思考力・判断力・表現力といった質の高い学力を、一部のエリートの子どもだけではなく、すべての子どもに一定程度保障し、より良く生きることを促すという課題があります。
フランスにおける論述の型とその育成法を示すことで、日本における論述の型の形成を促し、どの子も学校でそれを学び、論理的に思考し表現する力を獲得することにつながります。
石井英真
京都大学 教育学部 教育科学科/教育学研究科 教育学環専攻
アメリカと日本の教育評価や授業論、カリキュラム論を研究しています。学問的に深い内容と実践現場の複雑さを、ともに捉える研究が魅力です。どこまでもしつこく追究し続ける姿勢を学びました。
園山大祐
大阪大学 人間科学部 人間科学科/人間科学研究科 人間科学専攻
フランスの恵まれない子どもたちや、移民の子どもへの教育を研究しています。なぜフランスの教育を研究するのかを、妥協せずに問い続ける姿勢に影響を受けました。フランスの教育に最も詳しい一人です。
ゼミ生と龍安寺に遠足(校外学習引率の練習)
君の可能性 なぜ学校に行くのか
斎藤喜博(ちくま文庫)
なぜ学校に行くのかと、誰もが一度は考えたことがあると思います。戦後を代表する小学校教師の斎藤が、学校の具体的なエピソードをもとに語っていて、すべての人におすすめです。学校教育の可能性も感じられます。
教育をよみとく 教育学的探究のすすめ
田中耕治、石井英真、八田幸恵、本所恵、西岡加名恵(有斐閣)
高校生向けに書かれた教育学の入門書です。いじめなどの身近な問題を通して、教育を研究するとは何をどのようにすることなのか、研究の面白さは何なのかが、わかりやすく書いてあります。教育に興味がある人におすすめ。
文章は接続詞で決まる
石黒圭(光文社新書)
大学の授業の多くでは、レポートや論述試験で成績がつけられます。伝わる文章を書くには接続詞を使いこなすことが重要。「しかし」と「しかしながら」の違いなど、接続詞の使い方が具体的に書いてあり、すべての人におすすめ。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
法律。障害者はなぜ無罪になりうるのか、運転技能の証明書である免許証がなぜ身分証明書になるのかなど、新聞を読んでいて疑問に思うことが多いので、追究してみたいです。
Q2.熱中したゲームは?
中学生の時まで、『ドラゴンクエスト』などのRPGが好きでした。インフルエンザになった時は、一週間のあいだ一日中やっていました。好きなことに熱中する姿勢は研究にもつながるかもしれません。
Q3.大学時代の部活・サークルは?
テニスと陸上部とフェンシング。飽きっぽいため、ころころと変わりました。今でもジョギングのフォームが良いのは、陸上部で毎日10キロ走っていたおかげです。
Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?
トイレの前に立って、「トイレはこちらです」と案内する仕事。当初は料理を運ぶ仕事でしたが、あまりに要領が悪くて迷惑になったからか、どう考えても意味のない仕事に回されてしまいました。