【日本史】

平安時代の説話

日本最古の説話集『日本霊異記』を歴史学で分析 

本郷真紹先生

 

立命館大学

文学部 人文学科 日本史研究学域(文学研究科 人文学専攻)

 

 出会いの一冊

白山信仰の源流 泰澄の生涯と古代仏教

本郷真紹(法蔵館)

白山は北陸地域にある霊山で、古くから信仰の対象となってきました。山は神が宿る所として、また神そのものとして崇められたのですが、同時に、仏教の僧には修行の場でもありました。そのような関係から、山の存在を媒介として在来の神に対する信仰と、仏教という外来の宗教の信仰が混ざり合い、神仏習合という特色ある信仰の形態を生み出したのです。

 

この白山を奈良時代に行場として開拓したとされる泰澄という僧の伝記から、日本古代の神仏混合の過程とその意義を探ろうとしたのが、この研究です。そこには、この地域の特色である渡来系文化の影響や、律令国家の仏教政策との関係など、興味の引かれる点がたくさん見受けられています。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

日本最古の説話集『日本霊異記』を歴史学で分析 

非科学的で荒唐無稽な説話は創り話なのか

『日本霊異記』は、平安初期に成立した日本最古の説話集です。そこには、『日本書紀』などの正史と異なり、皇族・貴族から庶民に至るまで、幅広い階層の人々の生き様が描かれています。

 

ただし、説話はあくまで伝承に基づいて書き記されたものですから、非科学的、荒唐無稽な要素も多く、また、一見事実のように受け取られる部分も、後世に創作・潤色されたものでないと言い切ることはできません。しかし、他の史料との比較検討や、論理的な追究を試みれば、当時の世情をそこに見て取ることが可能となります。

 

従来、国語学や国文学の分野で研究が進められ、優れた注釈書や論文が著されてきました。これらは貴重な業績ですが、歴史学の立場から改めて分析を試みようとするのが、本研究の目的です。

 

歴史学の実証第一主義で事実を検証

 

歴史学は実証第一、事実関係を可能な限り解明することが基本です。情報技術が飛躍的に進んでいる現在、多くの情報や知識が簡単に得られるようになりました。ですが、その中には虚偽も多く、また、従来の通説や常識にも、再考の余地がある部分が少なくありません。

 

多くのデータを総合的に分析して事実関係を究明し、それにもとづき、新たな角度から解釈や評価を試みようとする姿勢こそが、斬新な発想をもたらします。その意味で、歴史学の方法論は、現代社会の様々な分野で、いろいろな課題に対応できると確信しています。

 

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「平安期仏教説話の社会史思想史的考察-日本霊異記・三宝絵を中心に-」

詳しくはこちら

 

 どこで学べる?

「日本史」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

20.文化・文学・歴史・哲学」の「83.史学、考古学」

 


 先生の講義では

◆初回の講義で話すこと

 

高校の教科書は50%が事実であるとしても、残り50%には不確かな要素が多く含まれています。それを鵜呑みにせず疑問とする点を見出し、とことんこだわって違った可能性を導くように頑張ってみましょう。騙されてはいけません。信じ込まされてはいけません。嘘は見破らねばなりません。こういったことを話します。

  

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
2019年12月26日、宮崎・鵬翔高校での高校生対象模擬講義
2019年12月26日、宮崎・鵬翔高校での高校生対象模擬講義
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1)大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(2)小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(3)官庁、自治体、公的法人、国際機関等

 

◆主な職種

 

(1)大学等研究機関所属の教員・研究者

(2)中学校・高校教員など

(3)その他教育機関教員、インストラクター

 

◆学んだことはどう生きる?

 

歴史学の分析視覚と方法は、直接歴史に関係のない分野においても、新しい視点での分析と説得的な議論の展開という点で、斬新な発想を生み出す要素を兼ね備えていると思います。常識や通説をありのままに受け止めるのでなく、少しでも疑問に感じる点があればとことんそれにこだわり、自身が納得の行くまで多角的に考察を進める姿勢を養成します。いずれの分野でも、多くの卒業生が指導的役割を果たし、組織を牽引しています。

 

 先生の学部・学科は?

立命館史学という名称でよく知られるように、立命館大学は日本史学の研究においてこれまで多くの実績を上げており、スタッフも文献史学と考古学併せて11名という、極めて充実した環境にあります。全時代・全分野をカバーし、学生のあらゆる研究関心に応じる態勢が整っています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

古代天皇の誕生

吉村武彦(角川ソフィア文庫)

日本古代史必読の書。万世一系と呼ばれる日本の王権=天皇が、どのような経緯で出現したかを、文献を中心に考古学の成果も踏まえながら明らかにしようとする書です。



飛鳥の都 シリーズ日本古代史3

吉川真司(岩波新書)

これも古代史の必読書。7世紀、初の女帝とされる推古天皇の時代から、天武・持統朝に古代律令国家の基盤が作られるまでの過程を平易に解説した書です。



天皇の歴史2 聖武天皇と仏都平城京

吉川真司(講談社学術文庫)

8世紀の奈良時代に、盧舎那大仏の造立と仏国土の建設という壮大な構想を抱き、一大事業を敢行した聖武天皇の足跡から、仏都という新たな概念を用いて平城京の特質を描き出しています。

 


 先生に一問一答

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

歴史学か医学

 

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

イギリス。何といっても、歴史の重みと伝統、その雰囲気を一番感じる国。

 

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

松任谷由実。お気に入りは『雪月花』。

 

Q4.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『ラストエンペラー』

 

Q5.大学時代の部活・サークルは?

アメリカン・フットボール部