【地域研究】

アメリカ製造業

中国との貿易がアメリカの製造業労働者に与えた影響とは

山縣宏之先生

 

立教大学

経済学部 経済学科(経済学研究科 経済学専攻)

 

 出会いの一冊

華氏119(映画)

マイケル・ムーア(監督)

物議をかもすドキュメンタリー映画を作り続けるムーア監督の力作。アメリカの選挙制度、経済の状況、なぜトランプ大統領が誕生したのか、その社会的背景を鋭く、コミカルに描きます。マイケル・ムーア監督は、トランプ大統領に反対の立場ですが、その誕生を「予言」していました。

 

なぜ、過激な発言を繰り返す、「アメリカファースト」(アメリカ、自国第一主義)の大統領が誕生したのか。かなりデフォルメした内容なので「本当はどうなっているのか」は大学に入って、ぜひ、ご自身で研究してほしいです。日本に、世界に大きな影響を持つ「アメリカ」の今を鋭く描く「問題作」です。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

中国との貿易がアメリカの製造業労働者に与えた影響とは

アメリカが中国と戦う理由は

 

私は『「チャイナ・トレード・ショック」とアメリカ製造業』というテーマを研究しています。アメリカと中国が「貿易戦争」をしていることは、皆さん日々のニュースで見ていますね。

 

なぜアメリカは、中国と激しく戦おうとしているのでしょうか。中国との貿易で、アメリカの人たち、特に製造業で働いていた人たちは、どのような影響を受けたのでしょうか。その本当の原因と解決策は何でしょうか。予断を排して、きちんと研究する必要があります。

 

グローバル化を逆転させるトランプ大統領

 

トランプ大統領は、世界各国間の「もの」のやりとりや、人の移動を自由にしてきた「グローバル化」を逆転させようとしています。世界経済の中で活動してきた日本が、今後苦しくなる可能性があります。

 

アメリカの中西部、製造業で働いている労働者たちの考えが、トランプ大統領を誕生させたと言われています。その人たちが最近の世界やアメリカの状況に、不満を持ったのです。

 

「他国を叩いてアメリカがトクする」はズレている

 

私はそんな「今、世界が変わろうとしているポイント、その理由、解決策はどこにあるのか」を政治・経済の理論研究、統計分析や現地調査で探っています。本当は、技術の進歩とグローバル化が、一部の人々の生活を脅かしているということ、解決策はその人たちの働き口や収入を、工夫して生み出していくことです。トランプ大統領の「他の国を叩いてアメリカがトクする」は、科学的にはズレているのです。

 

学生ジョイントゼミ大会
学生ジョイントゼミ大会
 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

トランプ現象の背景にあるアメリカ中西部の経済状態の改善、再生について。とりわけ、製造業労働者などの中間層が十分に暮らしていける、都市や大学のイノベーション能力を生かした新しい製造業の創出に必要な条件の研究を行っています。

 

具体的には、人工知能、自動運転、認識技術、ロボットとの協業などに関する製造業であり、そのために必要な、労働力訓練、大学や研究機関との連携、都市の創業環境の向上といったEntrepreneurial Ecosystem(創業のための生態系)政策の推進を研究しています。こうした政策は、テキサス州オースティン等で展開、アメリカの産業研究、地域科学の新しい潮流となっています。

 


 

◆先生が心がけていることは?

 

とにかく、人にとって有意義な仕事や産業とは何かを考え、調査し、論文化すること。

 

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「『チャイナ・トレード・ショック』とアメリカ製造業:労働・中間層対策・通商・地域」

詳しくはこちら

 

 どこで学べる?

「地域研究」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

20.文化・文学・歴史・哲学」の「81.地域研究、文化人類学・民俗学」

 


 先生のゼミでは

その時々の世界経済やアメリカ経済・アメリカ企業の経営に関する最新の課題を提示し、ゼミ生がチームを組んで研究します。半期ごとに他大学とのジョイントゼミを行い、研究課題について成果を競い合います。

 

研究課題をもとにしたアクティブラーニングであり、経済学・経営学理論を研究し、それをもとに最新の課題に対して説得力のある説明や解決策を提示できるようにします。大変ですが、伸びます。

  

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
卒業研究・研究室の様子
卒業研究・研究室の様子
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1)総合・専門商社の企画職・営業職

(2)外資系企業全般における様々な職種

(3)コンサルティング会社での企画職

 

◆学んだことはどう生きる?

 

アメリカを中心とした国際経済学、国際経営論を学んだことから、外資系企業(コンサルティング、ヘッドハンティング等)に勤め、アメリカ、香港などでキャリアを積んでいる卒業生がいます。

 

産業構造の変化の方向と経営課題の両方を踏まえ、大局的な観点から企業に必要なアドバイザリングができる、大局的に必要な人材ニーズと企業が必要とする人材をともに把握し、仲介することで、実績をあげています。

 

 先生の学部・学科は?

経済学部では、経済理論、歴史、経済政策の研究者が「バランス良くいること」に加え、会計学とファイナンス論の研究者がともに存在し、「お金」を市場と会計の観点から総合的に研究していることが特徴です。民間企業、公務員、会計士、その他、学生が多様な道に進むのに必要な基礎的科目、応用的科目を学生が柔軟に選択できるように、研究者の研究と交流が活発に行われています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

らくらく経済学入門たまご

茂木喜久雄(週刊住宅新聞社)

身近な例を使って、経済学の基本的考え方をわかりやすく解説。図や数式を使った解説もあり、経済学に早めに慣れることができます。



どうなる世界経済 入門 国際経済学

伊東元重(光文社新書)

少し古い本ですが、「国際経済学」の基本がわかります。なぜ「貿易」したら両国ともトクなんでしょう。EUとユーロはどうなるんでしょうか? そしてアメリカは?


 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

カナダ。多様性があり、生活しやすいので。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

ブラームス。特に、『交響曲第四番』。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

感動したのは、チャップリンの『独裁者』。印象に残っているのは『アラビアのロレンス』。民主主義の動揺、西洋社会の黄昏(現代に適用すると「中国の台頭」)をどう生きるかを考えさせられます。

 

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

京都の葵祭

 

Q5.会ってみたい有名人は?

ベンジャミン・フランクリン(アメリカ建国の父ですね)。あなたにとって「権力」とは何ですかときいてみたいです。