【ジェンダー】
SNS
SNSでの世論形成や自撮り文化をジェンダーの視点でみてみたら
田中洋美先生
明治大学
情報コミュニケーション学部 情報コミュニケーション学科(情報コミュニケーション研究科 情報コミュニケーション学専攻)
スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼(DVD)
中田秀夫(監督)
スマホは私たちの生活になくてはならないものとなっています。とても便利ですが、様々なリスクもあります。性別や年齢等、属性に関係ないものもありますが、ストーキングなど、男性よりも女性が遭いやすい被害もあります。
すでに様々な被害が新聞等で報道されてはいますが、この作品を見ることで、どんなリスクがあるのか、より具体的に想像できると思います。この作品をきっかけに、映画では取り上げられていない問題(例えば、小・中・高生の間で増えている自画撮りにまつわる被害)についても考えてもらえたらと思います。
SNSでの世論形成や自撮り文化をジェンダーの視点でみてみたら
SNSの広がりでコミュニケーションは変化
従来、メディアといえばマスメディアのことでしたが、2010 年代以降スマートフォンとそれを使ったSNSなどのソーシャルメディアの利用が広がって以来、メディアならびにそれを介したコミュニケーションのあり方は、大きく変わりつつあります。
これまではメディアメッセージの送り手とはなり得なかった人々が、様々なコンテンツを自ら生成して広く発信できるようになり、長らく存在していた送り手と受け手の間の境界が、また対人コミュニケーションとマス・コミュニケーションの間の境界が、大きく揺さぶられることになりました。
従来のコミュニケーション・モデルは見直しを迫られているわけですが、同時に新しい問題も起きています。
画像修正アプリと「男らしさ」「女らしさ」
様々な問題がある中で、私の研究ではジェンダー(人間の性別・セクシュアリティに関する差異やそれに関する認識、またそれらを生産・維持する社会メカニズム)に関するものを対象としています。
特に、(1)ソーシャルメディアによる新たな世論形成(#MeTooなど)と、(2)ソーシャルメディアの個人利用、特に自撮りなどの自己表象の実践を取り上げ、ジェンダーに関する社会規範とどう関係しているのかを見ています。例えば画像修正アプリの利用は、性別ごとに異なる形で規定されている身体の理想像とどう関係しているのか。また、若い世代における自画撮り被害の急増といった問題もあります。
新しいメディアには豊かなコミュニケーションを醸成する面もありますが、リスクもあります。まずはジェンダーの視点を交えた現状の理解が求められています。
実証的かつ理論的に研究する上で抽象的な議論は不可欠ですが、身近な具体例を使ったり、自分のこれまでの経験との関連で考えたりするなど、とっつきやすいよう工夫をしています。
就職先は様々ですが、エンタメ業界、マスコミ、銀行、メーカー等に加え、近年はSEになる卒業生が増えています。
情報コミュニケーション学部では、新しい情報通信技術により目まぐるしく変化しつつある現代社会の様々な局面について、情報とコミュニケーションの二つの視点から学ぶことができます。また文系から理系まで、様々な分野を専門とする先生方が所属する学際系学部であることから、複雑さを増す現代社会の研究でしばしば求められる、学際的なアプローチに触れることができます。
his(映画)
今泉力哉(監督)
同性同士のカップルをめぐる社会問題と人間模様を描いた作品。コメディではなくシリアスなヒューマンドラマとして、心の機微と同性愛をめぐる社会の現状を丁寧に描いています。同性を好きになる人もならない人も、考えさせられる内容です。