【経済政策】
東アジア経済
国際競争力のカギはIT化。コロナ時代の日中韓の経済を考える
乾友彦先生
学習院大学
国際社会科学部 国際社会科学科
グローバリゼーション・パラドクス 世界経済の未来を決める三つの道
ダニ・ロドリック、訳:柴山桂太、大川良文(白水社)
多発する移民問題や新型コロナウィルスの蔓延により、グローバリゼーションが曲り角を迎えています。日本を含め世界の多くの国がグローバリゼーションを望ましいものとして進めてきましたが、ここで一歩立ち止まって、グローバリゼーションの意味を再考する必要があるのではないかと思います。
私自身がグローバリゼーションの経済に与えるプラスの側面に直目して研究を進めてきましたが、経済だけではなく社会全体を俯瞰した、より多面的な見方がこれからの時代には求められます。
国際競争力のカギはIT化。コロナ時代の日中韓の経済を考える
経済のデジタル化と国際化の影響
現代社会の在り方を大きく変貌させるドライバーとなっているのが、経済のデジタル化と国際化ではないかと考え、この数年間研究してきました。私の研究は、経済のデジタル化、国際化が、企業ダイナミクス(企業・事業所の参入・退出、拡大・縮小)に与えた影響を東アジア3カ国(日本・韓国・中国)の企業、事業所データを用いて、類似性と相違性を定量的に評価することを目的としています。
新型コロナウィルスが世界に蔓延したことで、経済社会のグローバル化に急ブレーキがかかった一方で、「働き方の新しいスタイル」を実現するために経済のデジタル化は急加速することが求められています。
日中韓の企業研究はまだ進んでいない
アメリカ企業はグローバル化、IT化を急速に進めることを通じて、生産性を大幅に向上させ、国際競争力を高めています。アメリカ企業が、どのようにグローバル化、IT化を進め、企業のリストラクチャリング、ビジネスモデルの変更により生産性、競争力を高めたかについては、既に多くの研究があります。
一方、アメリカに遅れて急ピッチでグローバル化、IT化を進めている日本、韓国、中国企業に関する研究は、まだあまり進んでいません。グローバル化の推進が難しくなっている一方、IT化を急速に進める必要のある3つの国の企業の今までの対応、今後の方向性を研究、検討することは、ウィズコロナ、アフターコロナの時代の東アジア経済を考える上で不可欠だと考えます。
エコノミクス・ルール 憂鬱な科学の功罪
ダニ・ロドリック、訳:柴山桂太、大川良文(白水社)
経済学の本質的な役割を議論した本です。経済学を学ぶ意義や、そもそも何を学ぶのかがはっきりしない時、この本は学びの指針を与えてくれます。