【教育心理学】

子育て

地域で子ども見守る島で、母と子の距離感を考える

根ケ山光一先生

 

早稲田大学

人間科学部 人間環境科学科(人間科学研究科 人間科学専攻 人間行動・環境科学研究領域)

 

 出会いの一冊

アロマザリングの島の子どもたち 多良間島子別れフィールドノート

根ケ山光一(新曜社)

小さな島では、人々の生活に必要なものがコンパクトに一望でき、その中で育つ子どもの姿がリアルに描かれています。子どもは、母親だけではなく様々な人によって育てられていることや、絶海の離島という小さな世界にとても大切な人々の生活の営みがあることがわかります。

 

筆者が島に住んで得た体験をもとに、豊富な写真を交えて書き下ろしたもので、都会の便利ではあるけれども殺伐とした生活から、島の乏しいけれども人々の豊かな支え合いのある生活へと、何が大切かについて転換を迫る本だと思います。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

地域で子ども見守る島で、母と子の距離感を考える

母親と子がゆるやかに隔たる多良間島

母親が幼い子どもにとってとても大切な存在であることは、皆さんよくご存じですね。しかし、母子は実はそんなに愛にくるまれた関係ではないのではないか、母親と子どもにとってほどよい隔たりとはどれくらいのものか。こういう思いが私の頭をずっと占めています。

 

沖縄に多良間島という小さな離島があります。子どもが地域の皆に見守られ、結果として母子がゆるやかに隔たっていることが、この島の大きな特徴です。私の疑問を確認することができる貴重な島です。

 

初めて保育園に入れられる瞬間に違いが

 

母親が子育て以外の大切なことに専念したいとき、子どもは保育園に預けられることになりますが、その分離に対して子どもがどのように反応するかは、母子の隔たりの意味を考える重要な場面となります。

 

母子が密着した都会と、ゆるやかに隔たる多良間島では、同じ保育園の場面でも子どもの様子はずいぶん異なっている可能性があります。特に、それまでずっと家庭で母親と過ごしていた子どもが初めて保育園に入れられる瞬間は、その差がひときわ際立っている可能性があります。

 

まわりとの豊かな触れ合いで育つ

 

子どもたちは初の母子分離にどう反応し、どんな過程を経て保育園に慣れていくのでしょう。また、まわりの大人や子どもはその過程にどう関わるのでしょう。

 

こういった点を明らかにすることは、子どもが母親だけでなくまわりとの豊かな触れ合いによって育ちゆく存在だということを教えてくれます。それは子育ての世界を大きく変えてくれると信じています。

 

子ども人形劇活動をゼミで行っているところ
子ども人形劇活動をゼミで行っているところ
 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

沖縄は全国一貧困だと言われます。しかし人々はとても豊かに助け合って幸せそうに暮らしています。貧困の克服とは、けっしてお金がたくさんあるということ(だけ)ではありません。「心の貧困」をなくすうえで、私の研究は大事だと思います。

 


 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「離島と都市部の保育園新入園児における保育場面への移行に関する縦断研究」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

岸本健

聖心女子大学 現代教養学部 心理学科/文学研究科 人間科学専攻

【赤ん坊の指さし行動】子どもが母親の意図を読む能力の発達という重要なテーマを研究しています。

岸本先生のページ


小島康生

中京大学 心理学部 心理学科/心理学研究科 発達心理学専攻

【地域における子どものネットワーク】子ども自身が持っている、世界を広げていく力をフィールドで明らかにする研究をしています。

小島先生のページ

 


 どこで学べる?

「教育心理学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

21.教育・心理」の「87.教育心理学、社会心理学、実験心理学」

 


 先生の授業では

発達行動学の話題として、チンパンジーの自己鏡映像に対する反応の話をします。自分を客観視できることがいかに人間独自の行為かということを伝えます。

 

保育園の夏祭りのゼミ行事で、お化け屋敷を行ったときの様子
保育園の夏祭りのゼミ行事で、お化け屋敷を行ったときの様子
 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
ゼミでの一コマ
ゼミでの一コマ
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1) 金融関連企業(営業)

(2) 保育(保育士)

(3) ソフトウェア関連企業(システムエンジニア)

 

◆学んだことはどう生きる?

 

NPOを立ち上げて地域に入り込み、その土地の祭りを盛り上げることで都会の若者と地域をつなぎ、その地域の活性化を図っている卒業生がいます。フィールドに入り、地域に根ざした人間関係のつながりを構築するという姿勢が活かされています。

 

 先生の学部・学科は?

早稲田大学人間科学部は、人間環境・健康福祉・人間情報の3学科からなる学際的な学部です。人間の問題を要素還元的に考えることは大要を見失うという危険があり、人間科学はそれに対するアンチの立場として、総合化を目指します。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

人間はどこまで動物か 新しい人間像のために

アドルフ・ポルトマン、訳:高木正孝(岩波新書)

動物としての人間と、その子育てを考える視点を与えてくれる書籍です。



利己的な遺伝子

リチャード・ドーキンス、訳:日高敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二(紀伊國屋書店)

進化をふまえて私たちの身体や行動を捉え直すことができる、発想の転換が促される書物です。



なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える

安藤寿康(講談社現代新書)

人の発達や環境、教育といったことについて深く考えることのできる本です。

 


 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

英国。日本と異なる文化的価値観を身につけたいです。

 

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『アラビアのロレンス』

 

Q3.大学時代の部活・サークルは?

フェンシング部

 

Q4.研究以外で楽しいことは?

絵を描くこと。