【社会学】

メディア史

テレビ・映画・書籍に垣間見える孤独を探る

長谷正人先生

 

早稲田大学

文化構想学部 表象・メディア論系 (文学研究科 人文科学専攻)

 

 出会いの一冊

写真のなかの「わたし」 ポートレイトの歴史を読む

鳥原学(ちくまプリマ―新書)

自分たちの身近にある写真文化が、実は歴史を持っていることを知ってほしいです。例えば、プリクラやインスタグラムなど、若い人向けの最新流行の写真文化は、最新のテクノロジーの成果としてあるように思われるかもしれません。

 

しかしこれは実は、19世紀に写真文化が成り立った時から、ブルジョワジーたちによって形作られてきたものです。ブルジョワジーは、写真館で自分の肖像写真を撮っては知人と交換しあっていたのです。そのように、自分たちのやっていることが古くて新しいと感じて欲しいです。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

テレビ・映画・書籍に垣間見える孤独を探る

オンラインで「つながって」も疎外感・孤独感

コロナ禍の中、テレビ番組では、オンライン会議システムを通してリモート出演する人たちの会話によって進行させられることが多々あります。互いに切り離された状態で自宅から話す出演者たちを見て、私は「みんな孤独だなあ」と感じます。

 

私自身も授業や会議でこれを使ってみて、最初にカメラの向こう側に向かって語りかけたとき、相手の声はPCから聞こえているのに、自分の声はリアルな個室のなかに響いてるにすぎないことに驚き、自分が疎外されてしまったように感じて、思わず「聞こえてますか」と確認を取ってから話を始めることになりました。見ていると、誰もがそうしています。私たちは確かにそこで「つながって」いますが、「孤独」も感じるはずです。

 

金曜日夜、一人で「バルス」とツイート

 

このオンライン会議における「孤独」と「つながり」の問題は、いまに始まったことではなく、近代社会で様々なメディアを通して私たちが体験してきたことだと思います。

 

読書も映画鑑賞も同じです。あるいはツイッターで、金曜日夜に『天空の城ラピュタ』がテレビ放映されるとき、主人公たちが「バルス」という滅びの呪文を唱える瞬間に、皆が一斉に「バルス」とツイートするとき、人びとは「つながって」遊戯するのですが、金曜日夜の自室でスマホに「バルス」って書いている人は孤独だなあと思ったりします。

 

こうした、メディアが平凡な人たちの生活にもたらしてきた孤独の感覚を、歴史のなかから探り出したい。そんな研究を目指しています。

 

メディア社会論ゼミの議論中
メディア社会論ゼミの議論中
 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「メディア文化における「孤独」の系譜」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

前川修

近畿大学 文芸学部 文化デザイン学科

【写真史・写真論】該博な知識と取り上げる現象が面白いです。

前川先生のページ


加島卓

東海大学 文化社会学部 広報メディア学科

【メディア論】オリンピックのエンブレム問題も扱っています。世界との距離の取り方に注目しています。

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太田美奈子

新潟大学 人文学部 人文学科

【青森県の初期テレビ受容史】常識の向こう側に面白いことがあることを発見しています。

太田先生のページ

 


 どこで学べる?

「社会学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

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18.社会・法・国際・経済」の「72.社会学」

 


 先生のゼミでは

◆ゼミに配属されたときに

 

どの先生が良い先生かは決してわからないという話をします。「良い先生と出会うと人生が変わります。それは、出会う前に持っていた価値観が変わってしまったからこそ、良い先生なのです。だから良い先生を事前に選ぶことはできません。自分自身が未知の自分に変化することを受け入れれば、目の前の先生が良い先生になるのです。」と話しています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
講義の様子
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 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業職種

 

(1)通信事業の営業職

(2)マスコミ(アナウンサーなど)

 

◆学んだことはどう生きる?

 

あらゆる業界で活躍する多様な学生を卒業させてきましたが、私の専門学問をいかに活かしているかはまったくわかりません。そのように直接仕事に役に立つような知識やスキルを教えているのではなく、世界の変化に向き合える柔軟な感受性を伝えているように思います。

 

 先生の学部・学科は?

文化構想学部の表象・メディア論系は、従来の人文学を刷新するような新しい学問を探究する場として作られました。既存の芸術のみならず、テレビや映画やメディア・アートなどのメディア文化からマンガやアニメなどのサブカルチャーまで、これまで大学では扱わなかった領域も含めて、人間が作り出した諸文化を広い視点から扱っています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

未来少年コナン(アニメ)

宮崎駿(監督)

飛びあがって行く戦闘機の翼に、自分の足の指だけでつかまってついて行こうとします。思わず歯を食いしばって見てしまうような主人公のアクションの力動性に、宮崎駿の魅力が詰まっています。



ゼロ・グラビティ(映画)

アルフォンソ・キュアロン(監督)

突然の事故が起きて、宇宙空間にたった一人で投げ出されてしまった等身大の女性が、全力で地球に戻ろうとするその切なさが素晴らしいです。宇宙空間ひとりぼっちの疑似体験が、なぜか自分たちの現実の孤独を思わせます。



全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路

松本修(新潮文庫)

関西の人気テレビ番組『探偵ナイトスクープ』のプロデューサーが、「アホ」を使う地域と「バカ」を使う地域の境目はどこかを探究していくうちに、深く学問の営みに入り込んでいく感動の一書です。

 


 先生に一問一答

Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

グラディス・ナイト&ザ・ピップス。特に、『さよならは悲しい言葉』。

 

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

ハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』。

 

Q3.研究以外で楽しいことは?

渋野日向子のゴルフをテレビで見ること。

 

Q4.会ってみたい有名人は?

カーリングの本橋麻里。