【地域環境工学・計画学】

凍った土壌は農業や環境にどんな影響を起こしている? 凍土の物質循環を追求

渡辺晋生先生

 

三重大学

生物資源学部 共生環境学科

 

 どんなことを研究していますか?

地表が0℃以下に冷やされると、土中の水は、地表面に引き寄せられ凍結します。土中の水の移動にともない、重金属や塩など不純物や栄養分も地表面に運ばれます。大きな石や岩も、土壌の凍結と融解の繰り返しで地表付近に運ばれます。春になれば雪融け水によってこれらの物質の一部は地表から流れ出します。つまり土壌の凍結と融解は、土中の物質分布を大きく変えてしまうのです。私は、こうした物質循環を追求しています。

 

凍土地帯からの温暖化ガス放出の予測にもつながる

 

土壌の凍結と融解の繰り返しは、春先の農地の水分や栄養分に影響を及ぼします。過剰な水分の集積はトラクターの運行を困難にすることもあります。窒素肥料の地下水や河川への流出を引き起こすこともあります。土壌の凍結や融解にともなう水分移動を明らかにできれば、寒冷圏の農業利用や、土壌浸食対策、地下水管理が可能となります。

 

また、温暖化により永久凍土が融解し、強力な温暖化ガスであるメタンガスの地表への流出を招いてしまう問題も起きています。凍土の中の物質移動現象を明らかにできれば、凍土からの温暖化ガスの放出量を把握し、温暖化による影響を予測することができます。農業のみならず、環境問題にも寄与する研究です。

 

野外での実験風景
野外での実験風景
野外での実験風景
野外での実験風景
 この分野はどこで学べる?

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その領域カテゴリーはこちら↓

1.環境・防災」の「3.リサイクル、汚水処理・排ガス、資源循環」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→建設業、公務員

 

分野はどう活かされる?

 

土の凍結や浄化、環境保全に関する技術開発、設計施工に従事しています。

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

大学院では、土壌物理の情報と人が集まっており熱心な教育を受けられます。また、基礎の充実と周辺分野との融合がバランス良く進められており、ホットな話題が学べます。海外を含む他大学院との交流も盛んです。

 

学部では、土壌や農業そして環境について、生物、物理、化学、地学、社会科学系など視点から知識の裾野を広げるとともに、土壌物理をはじめとした専門知識を掘り下げることができます。異分野との交流も盛んで、様々な視点から現象を理解する力を磨けます。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室揃いのTシャツ(SOIL)で駅伝大会に出場しました。
研究室揃いのTシャツ(SOIL)で駅伝大会に出場しました。
 先生からひとこと

良い土って何でしょう。おいしいお米を作るには。火星で農業を営むには。一緒に土について考えてみましょう。凍土に触れて熱くなろう!

 

土にいろいろセンサーを挿して測定しています。
土にいろいろセンサーを挿して測定しています。
 先生の研究に挑戦しよう

・霜柱を作ってみよう(カップ麺の容器にお湯と混ぜた土を入れて凍らせてみる)。

・乾いた土を濡らしてみよう(様々な土で地温変化の違いを調べてみる)。

 

霜柱です
霜柱です
 興味がわいたら~先生おすすめ本

土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて

藤井一至(光文社新書)

土っていったい何だろう。「母なる大地」「人は土から離れては生きて行けない」「土から生まれ土に還る」多くの格言が語るように、皆さんの食べ物は土無しには生産されません。増え続ける人口。土壌は100億人を養うことはできるのでしょうか。本当に良い土とはどんな土なのでしょうか。地味でなかなか注目を浴びない土ですが、そこには様々な秘密と可能性があります。本書をめくって土にワクワクしてみませんか。 



18cmの奇跡 「土」にまつわる恐るべき事実!

陽捷行(三五館)

4億年の歳月を経て作られた、植物の生育に必要な「土壌」は、地球全体を平均するとわずか18cmしかないことを知っていますか。日本はフカフカで深くまで発達した土壌と豊富な淡水に恵まれているため想像し難いかもしれませんが、土壌は貴重な資源なのです。この土壌がどうやってできたのか。生物や人間とどう関わっているのか。そして私たちはどのようにこの土壌を守っていくべきか。素敵な写真を見ながら是非思いを馳せてください。 



科学の方法

中谷宇吉郎(岩波新書)

著者は世界で初めて人工雪の製作に成功した実験物理学者。私が大学院で過ごした低温科学研究所の礎を築いた研究者であり、初期の日本の凍土研究を支えた偉人です。「雪は天からの手紙」といった名言や科学を一般向けにわかりやすく伝える随筆を多く残したことでも知られます。

 

中でも本書は、科学的方法とは何か、科学ができることの限界などについて書かれた、長く読み継がれている一般書です。福島原発事故でみんなが感じた科学の限界、学術会議における科学者の役割など、今の科学とは何かを考える上での一つの指針となるのではないでしょうか。