【食品科学】

ミツバチの作ったプロポリスの有用成分を利用~植物資源を探索、健康食品に

熊澤茂則先生

 

静岡県立大学

食品栄養科学部 食品生命科学科(大学院食品栄養環境科学研究院 食品栄養科学専攻)

 

 どんなことを研究していますか?

ミツバチは木の芽や樹液など植物から樹脂を採集して、巣づくりに利用しています。この樹脂状物質をプロポリスと言います。プロポリスは巣の補強材になるとともに、巣への寄生者の侵入の防ぎ、カビや細菌の成長のさまたげる働きをします。プロポリスは抗酸化成分や抗菌成分などが含まれますので、人間は機能性成分として役立てることができます。このように自然界には、未利用資源がまだたくさんあります。

 

食品素材に含まれる機能性成分を分析

 

私は、未利用の植物資源の探索や、食品中の機能性成分の分析に取り組んでいます。具体的なテーマの一つが、ミツバチの生産するプロポリスや花粉に関する化学的な成分の探索です。そのほかに様々な農産物の未利用部分に含まれる有用成分の探索を行っています。さらにベリー果実や紫イモに含まれる赤色色素であるアントシアニン類について、成分分析と機能性の評価をしています。

 

アントシアニンはポリフェノールの一種で健康に良い成分と言われています。こうした食品の機能性成分の研究成果は、食品による健康維持や疾病予防機能の解明につながり、特定保健用食品の開発などにも貢献できると考えています。

 

インドネシアでの調査(2018年9月)
インドネシアでの調査(2018年9月)
 この分野はどこで学べる?

「食品科学」学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

8.食・農・動植物」の「31.食品科学、栄養学」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→食品会社、化学会社、受託分析会社、製薬会社、大学

●主な職種は→研究開発職

●業務の特徴は→機能性食品の開発、受託分析、品質管理

 

分野はどう活かされる?

 

食品成分を科学的に分析・評価することで、新製品の開発などにつなげています。

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

静岡県立大学・食品栄養科学部は、「食と健康」を科学する大学・学部です。私の所属する食品生命科学科では、「食の機能・開発と安全性に関する専門家」を育てるために、基礎から専門まで幅広い科目を配置して教育を行っています。同じ学部の栄養生命科学科と環境生命科学科とも連携しながら、少人数教育を実施しています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
 先生からひとこと

自然界には未利用な有用成分がまだたくさんあります。それらの有用成分を発見し、人間の健康に役立てられるような研究を展開していきたいと思っています。野外で植物調査や試料採集などを行うこともあります。ときには海外に出かけて学生はこのような研究に携わることで、卒業後に社会で通用する知識や実験技術を身につけることができます。

 

 先生の研究に挑戦しよう

【テーマ例】

・未利用植物資源に含まれる有用成分の探索

・いろいろな食品素材中に含まれる有用成分の分析

 

 興味がわいたら~先生おすすめ本

サプリメント・機能性食品の科学

近藤和雄、佐竹元吉(日刊工業新聞社)

食品には「栄養」「おいしさ」のほかに、「生体調節」の役割がある。サプリメントや機能性食品は、その「生体調節」の役割を食品に代わって担うために作られている。この本は、サプリメントや食品の機能性について、科学的な面からわかりやすく書かれている。



すべて分析化学者がお見通しです! 薬物から環境まで微量でも検出するスゴ腕の化学者

津村ゆかり、立木秀尚、高山透、堀野善司(技術評論社)

分析化学の技術を、環境・食品・医薬品・犯罪捜査・工業などの様々な分野の切り口から、非常にわかりやすく記述している本。社会の安心・安全を担う「分析屋」と呼ばれる化学者たちの手法や実例などを具体的に紹介している。