【構造生物化学】

DNAの配列変化によらない遺伝子発現のナゾに挑む

有田恭平先生

 

横浜市立大学

理学部(生命医科学研究科 生命医科学専攻)

 

 どんなことを研究していますか?

私たちの生命は、DNAの塩基の配列がすべてを決定していると考えられていました。ところが最近、DNAの配列変化によらない遺伝子発現の仕組みがあり、それによって複雑な生物の体を、より正確に形作っていることが明らかになってきました。このような遺伝子の配列の使われ方を制御する仕組みを、エピジェネティクスといいます。

 

エピジェネティクスにかかわるDNAメチル化とは

 

DNAはA、T、C、Gの4つの塩基の配列から構成されます。そのうちのC(シトシン)には、メチル化という化学的な反応が起きます。これをDNAメチル化と言います。これが、我々のDNA上の遺伝子のうち、どれを使うのかを決める目印になります。DNAメチル化は、塩基の配列に依存しないで、遺伝子の使われ方を制御する機構として注目されています。

 

私は、エピジェネティクスという生命現象に深くかかわるDNAメチル化がどのように起こるのか、DNAメチル化のマークをどのようにタンパク質が認識するのかを、タンパク質の形を見ることで明らかにする研究に取り組んでいます。

 

 この分野はどこで学べる?

「構造生物化学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→製薬会社、医療関係、化粧品、食品会社

●主な職種は→研究職、開発職、営業職

 

分野はどう活かされる?

 

私の所属している大学・大学院では、理学と医学がハイブリッドした研究科です。どちらの素養も持つ学生が、製薬企業や医療関係などで専門性と幅広い知識を生かして働いています。

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

理学と医学が初めてハイブリッドした学部であり、生命の基本的な現象から医学的なことを学べ、これまでにない新しい人材の創出が期待されます。生命科学の素養を持った人材の育成と教育に取り組んでいます。 

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室での様子
研究室での様子
 先生からひとこと

大学で学生は、自由に学びたいことを選択して教育を受けられます。横浜市立大学では、学部1年生から研究活動ができるシステム(理数マスター)があります。興味ある研究と巡り会える環境がありますので、研究の楽しみを存分に味わってください。

 

 興味がわいたら~先生おすすめ本

いきなりはじめる構造生物学

神田大輔(学研メディカル秀潤社)

バイオサイエンスに関する雑誌での、人気連載が書籍化したもの。タンパク質の形を見る方法の基本的な原理をわかりやすく説明し、またその研究がどのように人々の役に立っているかがわかる。高校生でも理解しやすい内容だ。 



エピジェネティクス 操られる遺伝子

リチャード・フランシス 野中香方子:訳(ダイヤモンド社)

エピジェネティクスという生命現象がいかに我々にとって身近な現象か、具体的な例を挙げながら説明している。いまだ解明されていないことの多い遺伝子の働きについて、エピジェネティクスの研究をもとに、一般の人にもわかりやすく解説する。 



ノーベル賞の生命科学入門 構造生物学の発展

石田寅夫(講談社)

ノーベル賞を受賞した構造生物学の研究が多数紹介されているとともに、これまでの歴史を振り返り、展望を述べている。生体分子の形を見る方法が、いかに注目を集めている研究であるかがわかる。