【高分子・繊維材料】

ゴムを科学する

池田裕子先生

 

京都工芸繊維大学

工芸科学部 応用化学課程 機能物質デザインコース(工芸科学研究科 機能物質化学専攻)

 

 どんなことを研究していますか?

植物由来の天然ゴムは、紀元前から南米で材料として利用されていたと言われています。その後ヨーロッパに渡り、19世紀にはゴム引き布が製造されましたが、寒い時には硬く、暑い時には柔らかくなってすぐに変形し、大変使いづらいものであったようです。

 

そのようなゴム製造が大きく進歩したのは、グッドイヤーが加硫を発明してからです。ゴムに硫黄と鉛白を混ぜて加熱(加硫)するとゴムの弾性が広い温度範囲で安定して、ゴムの本格的な利用が可能になりました。そして、オーエンスレーガーがある種の有機薬品を加えるとその効果がさらに促進されることを見出し、加硫技術がますます工業的に使われるようになっていきました。その後、カーボンブラックを補強剤として充てんする技術も開発され、ゴムは様々な用途に使われるようになりました。

 

このように、既に、研究開発においても長い歴史があるゴムですが、いろいろ調べるとまだわかっていないことばかりです。例えば、タイヤとして十分な性能を持たせるためにはカーボンブラックを補強充てん剤として入れると性能が上がることは知られていますが、なぜ性能が上がるのかということについては、今でもまだ、十分には解明されていないのです。また、天然ゴムから作る製品がなぜ強いのかということも、実はよくわかっていないのです。

 

今、私が最も力を入れて探究する研究テーマは、ゴム製品製造に必須の加硫反応のメカニズムの全貌を明らかにし、それをコントロールして物性を制御する技術を確立することです。天然ゴムの強さの謎を解明し、天然ゴムに倣って新しい材料を作ることにも挑戦したいです。ゴム科学は、今後も運輸や医療、建築など、社会にとって非常に重要な分野を支えてゆくでしょう。安全・安心な低炭素社会の構築に必須の学問領域であり、次世代のゴム科学確立に役立ちたいと考えています。

 

国際モデル研究室の取組「ゴム科学と技術-KITで学び、KITから世界に発信」で行った天然ゴムプランテーション訪問
国際モデル研究室の取組「ゴム科学と技術-KITで学び、KITから世界に発信」で行った天然ゴムプランテーション訪問
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17.化学・化学工学」の「68.有機化学、合成化学(薬設計の技術)」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→化学会社、ゴム会社

●主な職種は→技術者

●業務の特徴は→教育研究

 

分野はどう活かされる?

 

学生たちの好奇心と努力、国際モデル研究室としてのグローバルな活動

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

単科大学です。きめ細かに指導してくださる先生が大変多く、人生にチャレンジできる環境があります。

 

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国際モデル研究室の取組「ゴム科学と技術-KITで学び、KITから世界に発信」で行ったKITゴム科学の春の学校の参加者
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 先生からひとこと

諦めない!チャンスを逃さず、チャレンジして、努力を重ねて自己の夢を実現しよう!

 

 先生の研究に挑戦しよう

なぜ、ゴムは伸びて縮むのか、なぜ、ゴムは弾むのかについて考えてみてください。

 

 興味がわいたら~先生おすすめ本

天然ゴムの歴史 ヘベア樹の世界一周オデッセイから「交通化社会」へ

こうじや信三(京都大学学術出版会)

天然ゴムの故郷は、ブラジルのアマゾンです。しかし、現在の主な栽培地は東南アジアです。本書は、アマゾンから東南アジアに天然ゴムが伝わった歴史と、それに関わった人たちの物語です。冒険小説さながら、わくわくしながら読めます。また、ゴム材料で必須の天然ゴムのことが学べます。