【プラズマエレクトロニクス】

もう注射針は要らない 皮膚へのプラズマ照射で薬剤を吸収

清水一男先生

 

静岡大学

工学部 電気電子工学科 エネルギー・電子制御コース(総合科学技術研究科 工学専攻)

 

 どんなことを研究していますか?

普段の大気圧下でプラズマを発生させ空気を清浄にするエアコンなどで、プラズマ利用が普及してきています。この大気圧プラズマと呼ばれるプラズマ発生技術は、真空状態を作るなどの大がかりな装置を必要とせず、応用範囲はとても広いものです。

 

例えばその一つに、注射の代わりにプラズマの力で薬を体内に導入するマイクロプラズマ技術があります。皮膚にプラズマを照射することで、薬剤の皮膚への吸収を促進するのです。そうすると注射針がなくなり、小さな子どもはもちろん、毎週のように注射を打たなくてはいけない患者さんの生活の質の向上につながります。

 

飲めるマイクロプラズマカプセルも

 

将来的には飲めるマイクロプラズマカプセルを作り、皮膚からの吸収困難な高分子バイオ医薬品も注射や点滴に代わる、鼻腔から脳内へ、あるいは小腸粘膜から全身への薬剤送達を作りたいです。

 

マイクロプラズマは、従来の大気圧プラズマを極めて省電力かつ低電圧駆動させる技術の一つです。この方法を用いると、皮膚への物理的なダメージを与えなくて済み、注射嫌いの子どもや、あるいは貼り薬としてパッチ薬を使っている患者に役立ちます。そのため地元の医学部の先生たちとも共同で研究を進めています。

 

この分野はその応用範囲が広く、他にも大気圧マイクロプラズマ応用として、空気の流れをコントロールする流体の制御への利用が考えられており、自動車などの低燃費技術につながると期待されています。

 

清水研のアクティビティ(国際会議・バーベキューなど)
清水研のアクティビティ(国際会議・バーベキューなど)
 この分野はどこで学べる?

「プラズマエレクトロニクス」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

3.地球・宇宙・数学」の「10.素粒子、宇宙、プラズマ系物理」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→電機メーカー、電力会社、東海地域の自動車メーカー、バイクメーカー、自動車関連電装メーカーなど

●主な職種は→エンジニア、変わったところでは航空会社の総合職など

●業務の特徴は→室内空気浄化、プラズマ美容に関する開発など

 

分野はどう活かされる?

 

制御や回路設計もありますが、医学部との連携を通して、様々な分野への知見を広げてもらいたいとも考えています。大気圧プラズマは産業の中では材料分野と同じく、川上に位置するので、半導体、空気清浄、医療・バイオなど広範囲にその応用分野が見込まれます。就職には、その知見を活かしながらも特定の狭い分野に絞らずとも、自らの好奇心で考えてもらいたいと思います。

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

現在の科研費では、プラズマ物理の基礎課程を探るような研究は、なかなか採択が困難です(特に地方大学の場合)、そのため、独自の特色を出した事業化まで含めた研究開発として医療応用、農業応用が盛んに研究されています。

 

私の研究室では、大気圧下であっても、わずか数百ボルトで生成可能な大気圧マイクロプラズマを研究しています。従来の大気圧プラズマの駆動電圧が数千~数万ボルトに対して、低い電圧のため、半導体デバイスでの生成や制御が可能となっています。そのため、日本国内は元より新興国からの製品化や応用などの照会があります。しかしながら大学であって企業ではないので、シミュレーションによるプラズマ物理の状態などを合わせて行っています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
清水研究室のみなさん
清水研究室のみなさん
 先生からひとこと

皆さんは研究にはお金が必要という意識はまだ持っていないと思います。その意味では東大など旧帝大が圧倒的に有利であるのは間違いありません。逆に地方国立大学で優れた先生はhttps://kaken.nii.ac.jp/でわかりますので、それらも調べてください。ただ世界的な産業分野も大きく変化していますので、常に自分なりに勉強する必要性を考えていっていただきたいです。

 

 先生の研究に挑戦しよう

プラズマを小動物に照射しての変化、室内の微生物や化学物質除去、流体などの制御観察をするため、電気電子にこだわらず医学、薬学、バイオ系や流体工学など様々な分野にまたがることを意識して研究しています。

 

留学生(ヨーロッパ、アフリカ、アジア)が過半数であり、研究室でのゼミは原則、英語で行います(私も客員教授としてフランス等の大学で集中講義など行っています)。皆さんにはブロークンでも喋って、コミュニケーションできる能力も養っていただきたいです。

 

 興味がわいたら~先生おすすめ本

トコトンやさしいプラズマの本

山崎耕造(日刊工業新聞社)

プラズマとは何か、自然界にどのようなプラズマがあるのか、さらには、プラズマが産業にどのように使われているかやさしく説明している。プラズマエレクトロニクスは、プラズマを用いて半導体集積回路や太陽電池を作る方法を研究する学問領域。この本では、どんな製品を作るのにプラズマが使われているか書かれている。身近にある様々なモノがプラズマの助けで作られていることがわかって驚くかも知れない。