最先端研究を訪ねて


【持続可能システム】

二次電池

材料コストが従来の5分の1以下に。レアメタルを使わない二次電池の開発に成功

本間格先生

 

東北大学

工学部 化学・バイオ工学科 応用化学コース(環境科学研究科 先端環境創成学専攻/多元物質科学研究所)

 

研究室での実験
研究室での実験

 

◆研究のきっかけは何ですか

 

中国によるレアメタルの禁輸に端を発し、高価な希少資源のレアメタルを使わないことが、我が国の重要な元素の資源戦略になっています。

 

例えばパソコンや電気自動車の蓄電池として現在、希少金属のリチウムを材料に使うリチウムイオン電池が使われています。レアメタルを使わないで、これに代わりうる高エネルギー貯蔵密度の二次電池が開発できれば、再生エネルギーの低コスト化が可能になります。それによって、化石資源に依存しないクリーンエネルギーシステムが、基幹電力として普及することが期待されます。

 

 

◆どんな成果が上がりましたか

 

私は、環境に優しく負荷をかけない電源システムとして、レアメタルを使わない、高容量電池の開発に成功しました。

 

材料コストを従来の5分の1以下に抑えられる、非常に微小なサイズの有機材料を使った二次電池です。通常、正極にはリチウムを用います。その代わりに、有機正極材料を用いた新しいタイプのリチウムイオン電池を作ってその性能を測ったところ、電池の蓄積容量が従来の2倍を示しました。

 

また、レアメタル以外の水素、酸素、炭素、塩素、硫黄というたった5つの軽元素を用いても、自動車のバッテリーとして広く利用されている、鉛蓄電池クラスの性能を持った二次電池の開発にも成功しています。

 

レアメタルを使わず、高いエネルギーを蓄えられる二次電池は、再生可能エネルギーの普及に役立つと大きな期待が寄せられています。

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

脱炭素技術のキーテクノロジーである、再生可能エネルギーの普及拡大には、電力エネルギー利用技術の確立が欠かせません。特に、ゼロエミッション車である電気自動車・ハイブリッド車を実用化させるためには、安全で低価格の大容量蓄電池が必須です。

 

そこで、それらを実現する高エネルギー密度の電極材料開発を行っています。ナノテクノロジーを用いて、原子分子レベルからの精密な材料合成技術を開拓すれば、革新的素材が開発できると信じています。

 


 この道に進んだきっかけ

大学4年生の時に研究室配属があり、卒業論文の研究を行いました。毎日終電まで実験し、寝るのは夜中2時過ぎでしたが、新しい材料を自分で作って測定するのが本当に面白く、長い実験時間も苦にならないほど、楽しいものでした。また、指導教官や先輩の大学院生も面倒見が良くて、研究室生活をとても気に入ったことが大きな要因です。

 


 この分野はどこで学べる?

「持続可能システム」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

1.環境・防災」の「3.リサイクル、汚水処理・排ガス、資源循環」

 


 もっと先生の研究・研究室を見てみよう

本間研究室HP

 

東北大学多元物質科学研究所HP(先生のページ)

 

開発した二次電池
開発した二次電池
 学生はどんな研究を?

・次世代二次電池

・エネルギー材料開発

・革新的デバイスの機能材料生産プロセス開発

・学生の目指す目標→エネルギーイノベーション創生に貢献する機能性新素材の開発

 

 OB/OGはどんなところに就職?

◆主な業種

 

・自動車・機器

・半導体・電子部品・デバイス

・非鉄

・セラミクス、ガラス、炭素

 

◆主な職種

 

・基礎・応用研究、先行開発

・設計・開発、

・生産技術(プラント系以外)

・製造・施工

・生産管理・施工管理

・技術系企画・調査、コンサルタント

 

◆学んだことはどう生きる?

 

卒業生の8割強は、大学院テーマを活かした業種・企業に就職しており、また多くは修士論文テーマと連続性のある研究開発に従事しています。具体的には、次世代二次電池を研究していた学生は素材メーカーに就職して、リチウムイオン電池の負極材および正極材の研究開発を行っています。また、トヨタ自動車や日産自動車に就職して、車載用二次電池の研究開発にも従事しています。

 


 先生からひとこと

地球環境問題、持続可能社会、低炭素社会、再生可能エネルギーなど、これからの国際社会が解決しなければならない重要な社会問題に、科学技術で解決しようとする学問です。

 

環境イノベーションに貢献する最も重要な最先端科学技術であるばかりでなく、国際社会の政治経済問題とも直結する文理融合的、学際的な俯瞰的視野が必要となる総合学問なので、非常にやりがいがあるのが特徴です。将来的にはビジネスチャンスも多くあり、多くの機会に巡り合えます。

 


 中高生におすすめ

リチウムイオン電池の科学(内田老鶴圃)

工藤徹一、日比野光宏、本間格

本書はリチウムイオン電池の原理や開発経緯を概観した後、高性能二次電池材料に必要な材料化学、熱力学と速度論を解説した。近年、増加しているリチウムイオン電池分野の研究者を対象とした教科書として執筆された。電池分野を勉強したい大学院生や企業の研究者の入門書として発刊された。

 



 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

スウェーデン。教育レベルが高く豊かで平和な福祉先進国。瑞人は日本人と親和できそう。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

スウィング・アウト・シスターズ。ホイットニー・ヒューストン。ちょっと古いですかね?

 

Q3.会ってみたい有名人は?

オバマ元米国大統領。