Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
ボーカロイド曲を聴いていることが多いです。
最先端研究を訪ねて
【生物系薬学】
脂肪酸
体の代謝を調節する脂肪酸センサーを発見!肥満、糖尿病の治療法に貢献
平澤明先生
京都大学
薬学部(薬学研究科 医薬創成情報科学専攻)
GPR120遺伝子を改変したマウスの代謝測定を行っています。その装置内で、マウスが一定時間にどれくらいのO2を消費し、CO2を排出したかを計測し、代謝量を測定することができます。
◆着想のきっかけは何ですか
ヒトのDNAの配列は全て解読されました。しかし、その中に書かれている遺伝子の中には、機能がわからないものが、まだたくさんあります。我々の研究室では、機能不明の分子の中でも、GPR120というタンパク質が、脂肪酸を受け止め代謝を促すといった、センサーの役割を果たしていることを発見しました。全DNAの解読が達成された2003年から、2年後。2005年のことです。
この脂肪酸センサーは、食物の中に含まれる脂肪酸の中でも、魚油などに多く含まれ、サプリメントにもなっているEPA・DHAなどといった不飽和脂肪酸を検知できます。
この発見以来、このセンサーが生体内でどのように働いているのか、また病気との関わりが見出せないか、様々な方法を用いて調べてきました。今回の研究は、その過程で生まれました。
◆どんなことがわかりましたか
GPR120遺伝子を改変したマウスを作成して、様々な手法を用いて詳しく調べました。その結果、この脂肪酸センサーは、脂肪を貯める細胞で働く機能が重要であること、それが働かなくなると、脂肪分の多い餌を食べた際に、肥満や糖尿病を発症することがわかりました。
ヒトではどうでしょう。欧州の研究グループとの共同研究の結果、GPR120遺伝子の1カ所が変異すると、ヒトでは肥満になりやすくなることがわかりました。結果として、ヒトとマウスの両方で、このセンサーが肥満に関与することを証明しました。
◆その研究が進むと何が良いのでしょう
メタボリックシンドロームは先進国で増加しており、体内の代謝を調節する薬の開発が重要となっています。今回の研究で特に大きな発見として、脂肪酸センサーであるGPR120が、代謝のコントロールに関わる重要な分子であることを見出しています。
つまり、このセンサー分子を薬で調節することで、肥満だけでなく、体の代謝にとってより重篤な症状を生みやすい糖尿病に対して、治療方法を見つけることができると考えています。
体内のエネルギーのバランスや、代謝調節の異常から引き起こされる肥満や糖尿病は、特に先進国では多くの人がかかる可能性があります。代謝の調節に重要な役割を果たす、脂肪酸センサー分子を研究していますので、このセンサーを調節することで、代謝の異常を改善して健康な生活を確保することに寄与できればと思っています。
中学・高校時代には「化学部」に所属し、乏しい設備の中で試行錯誤を繰り返して実験したことが、学生時代の最も楽しい経験でした。この経験がなければ、研究者という選択肢は考えられなかったかも知れません。
ただ、私自身は非常に楽しく過ごしていたのですが、顧問の先生からは「爆発物を作ったら絶対に退学だ!」と繰り返し言われていましたので、傍から見ると相当危うげな生徒だったのでしょう。
修士修了後、経済的事情で企業の研究所に1度就職しましたが、研究以外の不得意な業務ばかりが増えて参っていたところに、声をかけてくれる先生がいて、大学に戻りました。その時、自分の思い通りに研究ができる自由を感じられ、非常に嬉しかったことが、今でも忘れられません。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
脂肪酸受容体分子について、様々な手法を用いて研究に取り組んでいます。コンピュータを用いた受容体に結合する化合物の探索、数理モデルを用いた解析、培養細胞を用いた化合物探し、実験動物を用いた解析など…。
コンピュータのみを用いて研究をする学生から、遺伝子組み換え動物(マウス)個体を用いた研究をする学生まで、非常に幅が広いです。実際の研究課題の例としては、以下のようなものがあります。
「脂肪酸受容体の活性化機構の数理モデルによる考察」
「脂肪センサーの筋肉における食餌誘導性の熱産生に関するメカニズムの研究」
◆主な業種
・薬剤・医薬品
・ソフトウエア・情報システム開発
・官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
大学などの研究職、製薬企業の研究職、官公庁、情報系の企業などです。
学部の授業では「情報基礎」(コンピュータの取り扱いの基礎)と「生理学」(生体内での臓器、細胞レベルでの様々な制御機構)の2つを教えています。全く関連なさそうに思うかも知れませんが、2つの科目で学ぶこと両方が必須となるような研究をしています。
研究の対象としているのは、ゲノム情報(DNAの配列情報)から新規の薬のターゲットを探す「ゲノム創薬」であり、大量のデータ処理のための技術と、生理学的な知識の両方が必要になる点が特色と言えるでしょう。この解析の結果、GPR120という遺伝子が脂肪酸センサーであることを発見し、現在、これを詳しく調べています。
遺伝子解析サービスを使って自分のゲノム情報を調べてみよう。
最近、唾液などを送るとそこからDNAを抽出することで個人の遺伝子を解析するサービスが比較的安価に行われるようになっています。解析方法も最新の手法が用いられているので調べてみると面白いと思います。
また、このサービスを実際に利用してみてもいいですし(ただし、18歳以下は保護者の承認が必要でしょう)、利用したつもりで検査対象となっている遺伝子と表現型との間の対応関係を調べてみるのも面白いでしょう。
ある遺伝子多型の検査結果はわかりやすいように、たとえば「あなたはお酒に強いタイプです」あるいは「弱いタイプです」と言う表現で戻ってくるでしょうが、この結果が、どの遺伝子のどのような変化と対応しているのかをインターネットを用いて調べられれば、いろいろなことがわかるはずです。
寺田寅彦随筆集
寺田寅彦(岩波文庫)
大正から昭和初期に活躍した物理学者と文学者、寺田寅彦の随筆。研究と研究者を取り巻く環境、研究と社会との関わりについての記述は、現代とあまり変わらないことに驚かされる。
また、当時の最新技術である「映画」に対する評論や、浮世絵を数学的に解析しようとしたり、伝承されている怪異を科学的な目で見ようとしたりといった箇所は、非常に楽しく読める。現在の最先端技術を、寺田寅彦先生だったらどのように捉えるのだろうかと思いながら読むのも楽しいだろう。
有頂天家族
森見登美彦(幻冬舎文庫)
ユーモアに満ちたファンタジー作品を多く手がけてきた人気作家・森見登美彦さんの一冊。主人公である狸たちが京都の町を舞台に、命がけで人間や天狗とのドタバタ騒動を巻き起こす。歴史ある京都の街並みの風情とともに、だいぶデフォルメされてはいるが、大学の様子が描かれているのも楽しい。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
ボーカロイド曲を聴いていることが多いです。
Q2.熱中したゲームは?
学生時代は「三國志」「大戦略」「水滸伝」などの戦略シミュレーションゲームで遊んでいました。「三國志」は同社で現在でも新しいバージョンが販売されているようです。
少し前には「艦隊これくしょん」というゲームでもよく遊びました。このゲームが流行ったおかげで祖父の乗っていた船まで有名になり、最近のゲームの社会的な影響力に驚かされました。
Q3.研究以外で楽しいことは?
秋葉原のジャンク屋を巡って怪しい部品を買い(コロナで最近行けませんが)電子工作をしていることが多いです。ArduinoやRaspberry Piなどの小型のコンピュータに繋いだり、サーバにしたりで遊んでいましたが、本業の研究に取り入れた技術もあるので、研究と遊びの境界線ははっきりしません。