最先端研究を訪ねて
【天文学】
巨大ブラックホールの起源
宇宙物理学最大の謎、太陽の10億倍の質量をもった巨大ブラックホール誕生の謎を解明!
大向一行先生
東北大学
理学部 宇宙地球物理学科 天文学コース(理学研究科 天文学専攻)
◆どんな研究をされていますか
以前、宇宙最初の星の形成過程について研究していた時に、外部から照射される紫外線量が通常よりもずっと大きな場合に、星形成ガスの収縮過程が奇妙なふるまいをすることに気づきました。
その後、外国の研究者により、そのような場合には星形成ガスの分裂が起こらず、単一の太陽の10万倍を超える巨大な星が生まれるのではないかと指摘されました。しかし、星が巨大に成長するには、単に分裂しないだけではなく、周囲のガスを、星自身からの強い紫外線放射に打ち勝って、重力により集め続けないといけません。
そこで、当初はあまり信じていなかったのですが、どこまで大きくなれるのかを数値シミュレーションにより調べてみたところ、その場合には星自身の進化も大きく変わって、紫外線がほとんど放射されず、巨大な星が実際生まれることがわかりました。このような巨大な星は、銀河中心に存在する巨大ブラックホールの起源として、現在注目されています。
◆ブラックホールの未解明の謎とはなんですか
我々の銀河系をはじめ、ある程度立派な銀河の中心には太陽の100万倍から10億倍の質量をもった巨大ブラックホールが存在していることがわかっていますが、それがなぜどのようにして発生したのかは未だに謎のままです。銀河中心に普遍的に存在する巨大ブラックホールの起源は宇宙物理学の最大の謎の1つなのです。
◆今回の研究で何がわかりましたか
現在の宇宙には多様な天体が存在していますが、宇宙が138億年前にビッグバンにより生まれた時は巨大なエネルギーの塊だけで、そこから巨大なブラックホールを始めとする様々な天体がどのように発生してきたのかよくわかっていません。しかし、私たちの研究により、宇宙初期に誕生した巨大星が起源となっている可能性があることがわかりました。
◆具体的な研究方法を教えてください
研究方法は、物理法則の方程式をコンピュータ上で解く数値シミュレーションで行います。その結果をほかのグループが行っている観測と比較することによって、私たちのシナリオが正しいかどうかを検証しています。この研究業績は、天文学の大問題に対して、独自性の高い研究として、国際的にも高く評価されています。
学部生のゼミでは、理論宇宙物理学全般を学びます。院生の研究テーマは、私をはじめ研究室の教員のテーマに関係した、宇宙初期の天体形成、巨大ブラックホールの起源、天体高エネルギー現象などが多いです。
◆主な業種
・金融・保険・証券・ファイナンシャル
・大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
・経理・会計・財務、金融ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
大学や研究所の研究員、教員のほか、民間企業では微分方程式など数学的な素養を活かしています。金融系企業では、金融や保険などの将来動向のモデル化などに携わることがあるようです。
全国でも数少ない天文学教室が独立してあるため、教員数も20名近くと非常に多く、天文学における多様な分野が学べ、最先端の研究を行うことができます。
宇宙と生命の起源2
小久保英一郎、嶺重慎:編著(岩波ジュニア新書)
宇宙の始まりは何か、銀河、太陽、そして地球はどうやってでき、生命が誕生したのか。この本は、様々な天体の起源と地上における生命の発生について解説する。高校生レベルでも理解できることを目指して、各分野の研究者12人が一章ずつ独立して執筆している。宇宙初期にブラックホールが誕生したという謎についても書いている。
史記列伝
司馬遷:著 小川環樹、今鷹真、福島吉彦:訳(岩波文庫)
中国最初の史書『史記』の最後に収録されている、宰相、武将、循吏(良い役人)、酷吏(悪い役人)といった公的な立場の人物から、刺客、侠客といったアウトロー、素封家(財産家)にいたるまでの70人の列伝。様々な人物の個性的な生き方は人生の参考になる。