Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
地震とか、気象関係でしょうか。
最先端研究を訪ねて
【物性I】
レーザー
まるでSF映画のような「冷凍光線」を実現!新規の電子部品の材料開発に貢献する
岩井伸一郎先生
東北大学
理学部 物理学科(理学研究科 物理学専攻)
◆この研究の着想のきっかけは何ですか
物質に光を当てると、熱を持つようになるのが常識です。機械部品のレーザー加工や外科手術用のレーザーメスは、この「常識」を応用したものですが、子どもの頃に見たSF映画では「冷凍光線」という武器がありました。
はたして、冷凍光線は可能なのでしょうか。可能だとしたらどういう原理なのかという疑問が、この研究を始めるきっかけでした。そしてその実現に成功しました。
◆どんな困難がありましたか
レーザーは照射する物質の温度を上げ、原子の振動や電子の運動の乱雑さを増します。逆に、物質の温度が下がることは、原子や電子の動きが抑制され、運動の方向や速さが一定の秩序立った動きであることを意味します。つまり、レーザーが「熱源」である限り、冷凍光線を作るのは常識的には不可能です。
しかし私たちは、非常に短い時間幅のレーザーを用いることによって、電子や原子が勝手に動きまわる隙を与えることなく、電子の動きをコントロールすることに成功しました。
ここでは、レーザーは熱源としてではなく、強い電場によって「電子を動けなくする」道具として用いたことがポイントです。電子の運動を抑制したという意味で、レーザーは冷凍光線の役割を果たしたと言えます。
◆その研究が進むと何が良いのでしょうか
一般に、電気的に電子をコントロールしようとすれば、必ず熱が発生します。コンピュータ情報処理や、高速通信などを担う電子部品の材料の問題点は、高価な液体ヘリウムなどを使って、それが動くために温度を低くしなければならない点にありました。
しかし、レーザーで電子装置の必要な部分を、必要な時間だけ瞬間的に冷却できれば、装置本体は室温のままで動かすことができると期待できます。
高速通信やコンピュータは、コミュニケーションや情報処理の速度を上げることで、働く時間を短くし、消費電力を減少させる可能性を秘めています。そのために、量子コンピュータや並列処理などの試みが盛んに行われています。
しかし、その前提になっているデバイス単体の応答速度は、物理限界には到達していません。現在の電子デバイスの速度は10億ヘルツですが、それを千倍あるいはそれ以上高速化することによって、通信や計算の速度を飛躍的に向上できます。
大学学部時代は、特に研究者になろうとは思っていませんでした。普通に就職したら、会社があまり面白くなかったので。
非常に短いパルスレーザーを使った「冷凍光線」のほか、超伝導体や強誘電体の光応答に関する研究などを行っています。コンピュータや通信の高速化(現在の千倍以上)に繋がることが期待されています。
◆主な業種
・電気機械・機器(重電系は除く)
・コンピュータ・情報通信機器
・半導体・電子部品・デバイス
・医療機器、光学機器
・大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
・設計・開発
・生産技術(プラント系以外)
・製造・施工
・生産管理・施工管理
・品質管理・評価
・システムエンジニア
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
光学機器の開発と応用(テラヘルツデバイスの開発や医療応用など)に従事している人が多いようです。
どんなことでも、自分が面白いと思ったことをやるのがよいと思います。世間で流行しているという理由で研究テーマを選ぶのは、やめたほうがよいです。皆さんが社会で活躍する頃には、終わっている可能性が高いと思います。
レーザーはこうして生まれた
C・H・タウンズ:著 霜田光一:訳(岩波書店)
レーザーは、CDやICタグの読み取り装置など、社会で広く応用されている。そして最先端研究では、今や超短パルスレーザーやX線自由電子レーザーなどが開発されており、超微細加工やタンパク質の構造解析など、レーザーが発明された時には全く想像できなかった技術が、現実のものとなっている。
この歴史的な発見は、1人の天才がたまたま成功したものではなく、原子・分子の構造、マイクロ波と物質との相互作用など、多くの基礎研究の歴史の積み重ねの結果、ある種の必然としてなされたものである。
本書を通し、その必然がどういう人々によって、どのようにもたらされたのかを知ってほしい。どんな科学の進歩もそれに情熱を傾ける人間のドラマは必ずあり、社会が直面している問題と無関係ではない。
二重らせん
ジェームス・D・ワトソン:著 江上不二夫、中村桂子:訳(ブルーバックス)
現在の分子レベルでの生命科学の進歩の原点とも言える、DNAの二重らせん構造の発見の経緯の内幕を、ノーベル賞受賞者本人が語った本。この歴史的な発見も、それまでの多くの生命科学研究者たちの研究の上になされたものであり、本書からも、一歩一歩研究を積み重ねることの大切さが分かる。
アポロ13
ジム・ラベル、ジェフリー・クルーガー 河合裕:訳 (新潮文庫)
1970年、3名の宇宙飛行士を乗せ、人類史上3番目の月着陸を目指したアポロ13号。往路で酸素タンクが爆発し、月探索はおろか地球への帰還も絶望的になった。地上のプロジェクトチームと搭乗員3名は、いかにして生還したのか。
答えが分からない、あるいは答えがあるのかどうか分からない問題に対し、リスクや無駄を最小にし、かつ大胆に勝算を考える。最先端科学のフロンティアに挑むために必要な方法論の多くが、この本に含まれている。
特に、直目する難局に1つひとつ真面目に向き合っていくしか成功(=生還)に至る道はない、ということが説得力をもって示されている。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
地震とか、気象関係でしょうか。
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『少林サッカー』
Q3.大学時代の部活・サークルは?
テニス