Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
地球物理学(地震の研究)
最先端研究を訪ねて
【素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理】
重力の物理法則
素粒子物理学の最大の難問、重力の物理法則の解明に挑む
高柳匡先生
京都大学
理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻/基礎物理学研究所
◆研究の着想のきっかけは何ですか
この研究は、熱意ある大学院生と議論を繰り返すうちに思いついたアイデアが、もとになっています。高校の物理でも勉強する熱力学では、エネルギー保存則などの熱力学の法則が成り立ちます。一方、ブラックホールと呼ばれる非常に重力が強い、つまり重力の異常な状態の天体に対しても、なぜか熱力学の法則と全く同じ物理法則が成り立つことが、よく知られています。
この熱力学とブラックホールの不思議な関係を議論しているうちに、もっと一般的に「重力の物理法則そのものが、熱力学の法則と解釈できるのではないのか」という着想を得ました。
◆研究の結果、何がわかりましたか
重力は誰にでも理解しやすいようで、実際に素粒子物理のミクロな世界の分野で重力の物理法則を考察すると、理論的に多くの困難が生じることがよく知られています。しかし、この解明困難な重力の物理法則を、熱力学に類似した物質の物理法則を用いて理解できる可能性があるのではないかと考えました。
その研究の結果、最大の成果は「重力の物理法則」が、それと一見全く関係がないと思われる物質のミクロな物理法則と、実は等価であること、つまり同じものであることを見出したのです。
◆この研究が進むと何がよいのでしょう
この研究をさらに推し進めることで、理論物理学の最大の難問と言われている、ミクロな世界での重力の物理法則の解明につながると期待されます。私たちの見出した新しい観点は、物理の基礎的法則の研究に大きなインパクトを与え、国際的にも大変注目を浴びています。
中学・高校では、数学がとても好きであったが、もともと物理にはそれほど関心を持っていなかった。高校3年生の時に、自宅から塾まで電車に1時間程度かけて通っていたが、幸いに帰りは始発駅から乗るので毎回座れた。その時間を使って、受験勉強ではなく大学の物理学の教養課程の教科書を読んでいた。そこで、物理法則を高校の教科書とは違い(偏)微分方程式で記述する手法に、強い感銘を受けた。
特に、電磁気学のマックスウェル方程式の美しさに感動し、理論物理学を志すきっかけとなった。今思うとその美しさの理由こそ、電場と磁場を入れ換える双対性と呼ばれる素粒子論で重要な対称性であった。
◆「湯川理論物理学研究所へのインタビュー」(京都大学)
◆「高柳匡教授が、平成28年度(第62回)仁科記念賞を受賞」(京都大学基礎物理学研究所)
◆「平成28年度(第62回)仁科記念賞受賞者一覧」(公益財団法人仁科記念財団)
◆「高柳匡客員上級科学研究員が仁科記念賞を受賞」(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構)
◆「エンタングルメント・エントロピーのダイナミクスの解明」(科研費NEWS)
京都大学基礎物理学研究所素粒子論グループでは、手始めとして学生には、素粒子や物質のミクロな物理法則を表す「場の量子論」や、重力のマクロな物理法則である「一般相対性理論」について、ゼミや独習等で習得してもらっています。
当研究室では素粒子論の中でも、特に「超ひも理論」という分野を研究しています。この研究分野は、重力のミクロな物理法則を解明することを目標としており、当研究室ではこの問題に対して、様々なアプローチを研究しています。
所属する学生には「ホログラフィー原理(もしくはゲージ重力対応)」と呼ばれる、重力の理論と物質の理論の対応関係を勉強することを勧めています。その後で、学生はそれぞれの興味に応じた手法やテーマを選び、重力のミクロな物理法則の解明に向けた研究を行っています。量子情報理論や物性理論といった、従来の素粒子論では扱わない他分野とも密接な関係があり、それらとの境界領域の研究も活発に行っています。
◆主な業種
・大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
・小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
・コンピュータ・情報通信機器
◆主な職種
・大学等研究機関所属の教員・研究者
・中学校・高校教員など
・技術系企画・調査、コンサルタント
◆学んだことはどう生きる?
この分野の数理的な思考法の経験を、同じ分野の研究業務以外にも、ITや金融の分野においてうまく生かしている卒業生も多くいます。
私たちの研究対象である素粒子論の分野では、少人数の共同研究が中心で、若手研究者同士の共同研究で、重要な成果を挙げることが多々あります。大学院の修士課程の2年間は、学生の興味に応じて研究テーマの選択等を指導していますが、博士課程に入る頃からは、学生自身が自分の力で研究テーマを見つける努力をしてもらいます。
そして博士号を取得し、別の大学のポスドク研究員になる頃には、完全に独立した研究者として、本人が中心となった研究プロジェクトの発案、推進を行う能力を有していることが望ましいです。そのように早い段階で自立した研究者に成長し、自分の世界を開拓していけるよう、指導を心がけています。
1. 電荷があると、クーロンの法則で電場が生じます。同じように、もし磁荷を持つ粒子(モノポールと呼ばれます)が存在すると磁場も生成されることになります。また、時間的に磁場が変化すると電磁誘導によって電場が生じます。面白いことに、逆に磁場が時間的に変化すると電場が生じる変位電流という現象が知られていますので、調べてみましょう。これらを総合すると、物理法則において電場と磁場は対等に現れ、実は両者を入れ換えても物理法則は同じ形になるのですが、これを確かめてみてください。
2.ブラックホールと呼ばれる天体は、極めて強い重力を持ち、物質や光が強く引きつけられ外に出られないことがその名前の由来となっています。しかしホーキングは、実はブラックホールが温度を持っていて、熱放射で外部にエネルギーが放出されていく現象(ブラックホールの蒸発と呼ばれます)を発見しました。この現象について調べてみて、最終的にブラックホールが蒸発して消えてしまうとどのような問題が生じるか考えてみましょう。
大栗先生の超弦理論入門
大栗博司(ブルーバックス)
一般の読者を念頭に「物質の基本は“点”ではなく“ひも”」という、理論物理学最先端の「超ひも理論」の魅力を見事に解説した素晴らしい本。「超ひも理論」がどのような理論で、何を目指そうとしているのか、専門的な予備知識がなくてもその概要を理解できるよう、易しく解説されている。
物理学
小出昭一郎(裳華房)
大学の一般教養レベルの標準的な教科書。背伸びをしたい高校生にお勧め。高校の教科書ではなかなか感じることができない、数学を用いた物理法則の表現など、理論物理学の魅力を垣間見ることができる。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
地球物理学(地震の研究)
Q2.熱中したゲームは?
歴史シュミレーションゲーム
Q3.研究以外で楽しいことは?
住んでいる京都の名所旧跡